診療科紹介総合診療科
2011年度 | 2010年度

臨床研修医先生へ

総合診療科では、下記の特徴があり、林 真部長を中心として診療に従事しています。

定例事項について

平日、朝8時30分より、モーニング・カンファレンスをしています。
火曜日のみ、8時15分より、放射線科の読影会に参加しています。また、14時30分より、内科合同カンファレンス(総合診療科・呼吸器科・糖尿病科・脳神経内科)をしています。
水曜日および金曜日午後は、救急車当番を担当しています。

外来について

外来では、病院スタッフ医師が生活習慣病外来と新患外来を担当しています。スタッフ医師のサポートをすることが可能です。
また、準直帯(17時〜19時)・当直帯(19時〜9時)のサポートをすることで、救急対応時における実践的なプライマリ・ケアを学ぶことも可能です。

2011年度

患者さんと総合診療科の『接点』について,以下のように,3つに分けてみました.

@「外来」患者さんと総合診療科の医師との接点

原三信病院の内科外来は、大きく分けて、「専門外来」と「新患外来」の二つに分かれます。専門外来は、呼吸器科、循環器科、消化器科、肝臓内科、血液内科、脳神経内科、腎臓内科、糖尿病科と各専門分野があります。しかしながら、専門医の意見または緊急性を必要としない疾患については、新患外来が担当するようなっています。当院での新患外来は、呼吸器科および総合診療科の医師が中心となって、担当しています。

過去2年間について、新患外来を受診した患者の分類

2009年4月〜2011年3月の2年間において、総合診療科の新患外来を受診された1162名を調査した結果、受診理由の一番多くは、発熱・咽頭痛などの感染症での受診(39.6%)が受診理由でした。次いで、下痢・腹痛・便秘などの消化器疾患での受診(13.6%)、貧血治療・めまいなどの定期的な受診(8.9%)、二次健診を目的とした受診(8.3%)、そして、心療内科疾患と診断される受診(5.2%)でした。

今回の調査で注目すべき点は、「心療内科疾患と強く疑われる疾患」です。最近は、心療内科、メンタルクリニックが普及しているので、受診しやすくなりました。しかしながら、当院のような一般の内科新患外来においても、心療内科疾患と考えられた患者さんの頻度が少なくないことが分かりました。

私たち医師が診察した経験から言えば、患者さんが『「メンタル」の疾患になったかも。。。』と認識しながらも、一方では、「メンタル」の疾患を否定してもらうために、内科を受診している場合が多い傾向にありました。テレビで放送されているように、近年は、不景気がきっかけに、自殺者数の増加が問題視されるようになり、メンタルヘルス(精神に関わる健康)という概念も普及するようになりました。もっと言えば、国および行政が中心になって、会社の事業主単位においても、メンタルヘルスに関わる取り組みについて指導されるようになってきています。当院新患外来においては、内科的疾患を鑑別し、必要に応じて、心療内科、メンタルクリニックへの御紹介・御案内をさせていただいています。

今回調査した結果、以下のグラフのような結果になりました。

男女別における心療内科疾患の有無率と季節ごとでの変化

図1 男女別における心療内科疾患の有病率と季節ごとでの変化

図1のグラフでは、男性と女性では、差が認められていません。五月病という時期よりも、年度末〜春先までの寒い時期に、有病率(ある一時点での疾病頻度)が上昇する傾向になる事が分かりました。

男女別における心療内科疾患の有病率と年代別での変化

図2 男女別における心療内科疾患の有病率と年代別での変化

図2のグラフでは、男性と女性では、差が認められていません。年齢の増加とともに、有病率が上昇する傾向になることが分かりました。

A「再来」患者さんと総合診療科の医師との接点

私たち総合診療科医師が担当する再来患者さんについては、主に、生活習慣病の治療目的で受診する患者さんが中心となります。生活習慣病外来の場所は、新患外来の場所とは違い、睡眠障害センターおよび糖尿病科の再来患者さんと同じように、本館7階に位置しています。かぜやインフルエンザ感染症が流行した場合でも、生活習慣病(慢性疾患)で受診した患者さんが、安心して受診できる場所が確保できていると自負しています。

一方、生活習慣病外来では、「これからの新しい薬」の治験や「現在ある薬」の市販後調査における他施設との協力も行っており、多くの患者さんに、ご理解・ご協力いただいているところであります。さらに、独自の取り組みとして、HEART WILL研究という医師主導型の自主研究を行っており、5年後の脳血管疾患・心血管疾患および心不全の発症を予防する目的にて、調査を行っております。

過去2年間について、再来外来を受診した患者の分類

2009年4月〜2011年3月の2年間において、総合診療科の再来を受診された394名を調査した結果、高血圧症(28.7%)、脂質代謝異常(高脂血症、41.6%)、糖尿病(17.4%)、肥満(38.9%)、脳卒中・心筋梗塞の既往(6.8%)が認められました。

高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病の3つの生活習慣病と血管疾患の有病率

図3 高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病の3つの生活習慣病と血管疾患の有病率

図3のグラフでは、高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病の生活習慣病の3つのリスク数と脳卒中・心筋梗塞の有病率(ある一時点での疾病頻度)について調査を行った結果、生活習慣病の数が多いほど、過去に心筋梗塞や脳梗塞を合併している率が多いことが分かりました。このことは、一般の学会、さらに新聞などのメディアでもよく言われていることであり、私たちの生活習慣病外来では、常に、心筋梗塞や脳梗塞を発症させない「一次予防」について、積極的に取り組んでいます。

B「救急車搬送された」患者さんと総合診療科の医師との接点

救急搬送された患者さんは、曜日ごとに決まっている診療科が担当しています。総合診療科が担当している曜日は、水曜日と金曜日の午後になります。

救急医療の問題点と今後の当科の試み

最近の医療のニュースでは、『救急車の要請』について「適当」または「不適当」ということが話題になっています。総務省のホームページ「救急車の適正利用で、救える命を守ろう」(政府広報オンライン)および福岡市消防局のホームページ「救急車の適正利用にご協力下さい」では、「呼びかけ」があっても、私たち医療従事者に分かるような具体的な疾患についての症例がありません。もっとも、混沌としている現在の状況では、救急車を要請する利用者が、不適正か適正であるか判断するのは難しいと思われます。それゆえ、「不適正利用を制限」することは、事実的に困難だろうと予測されます。

当院で経験した具体において、同じ「急性アルコール中毒」の診断でも、軽症(呼びかけで覚醒)〜中等度(輸液治療)〜重症(入院)まで幅が広く、「救急車搬送の適正利用について」の前調査を検討するにあたって、診断名だけでは、重症度が判断できないことが分かりました。今後の課題として、医療従事者だけではなく、救急車を要請する利用者とともに、「適正・不適正利用の定義」を検討し、限られた医療資源についての適正配分の議論を深める必要があると思われます。

C学会・研究会・勉強会および研修医と総合診療科(2010年度)

【総合診療科が関わった当院の勉強会・会議への参加】

  • 生物統計学勉強会
  • 院内生活習慣病勉強会
  • 糖尿病科チーム医療

【他病院・施設との交流・勉強会への参加】

  • 九州大学院院内感染対策セミナー
  • 九州生活習慣病研究会
  • 九州大学病院医師臨床研修指導医講習会
  • 九州大学院院臨床データマネジメント講習会
  • 公益信託日本動脈硬化予防研究基金 統合研究 研究会
  • やさしい漢方入門セミナー
  • 九州・山口漢方アーベント

【演題提出した学会・勉強会】

  • 九州生活習慣病研究会
  • ウイルス肝炎・肝疾患研究会
  • 日本内科学会
  • 日本病院総合診療学会
  • 福岡県医学会総会

【当院の内科カンファレンスで発表した内容】

6月10日 四肢筋力低下を来した一症例(→Lambert-Eaton myasthenic syndrome)
9月2日 糖尿病性ケトアシドーシスの一症
9月30日 細菌性髄膜炎の一例
10月14日 体重減少を主訴に来院した一症例(→Parkinson病)
10月28日 肝膿瘍の一症例(保存的治療)
11月11日 急性心筋梗塞とたこつぼ心筋症の鑑別に苦慮した一例
11月25日 市中感染型MRSAによる傍脊柱筋膿瘍の一例

2010年度

入院について

研修医の先生は、主治医の先生と共に、入院の適応となった患者さんを担当します。
2009年に総合診療科に入院した入院患者の内訳(表1・図1)で説明します。第一に、感染症、次に、生活習慣病の教育入院、心・腎疾患および脳・心冠動脈血管障害など多岐にわたって疾患の診断・治療を行っています。さらに、専門性の高い疾患においては、各専門家への紹介・転科を行っています。総合診療科に徴色のある疾患としては、不明熱にて入院となった疾患についても、担当医となり鑑別しています。その他、総合診療科の病棟は、呼吸器内科、脳・神経内科、糖尿病科と同じフロアーにあり、他科へのコンサルテーション能力をフルに発揮しやすい環境にあり、総合診療科の研修期間中でも、他科の主治医の先生と共に治療を行うことが可能であることが特徴です。

表1 入院患者の12疾患分類および発熱を主訴とする疾患の割合

全体(290例) 発熱の主訴(138例)
12疾患分類 人数(例) 割合(%) 人数(例) 割合(%)
生活習慣病・教育入院 29 10.0 0 0/29(0.0)
脳・心・末梢血管障害 20 6.9 0 0/20(0.0)
耳鼻科疾患 17 5.9 0 0/17(0.0)
血液疾患 3 1.0 3 3/3(100.0)
感染症 114 39.3 96 96/114(84.2)
膠原病疾患 13 4.5 9 9/13(69.2)
精神科・心療内科疾患 16 5.5 8 8/16(50.0)
悪性疾患 14 4.8 4 4/14(28.6)
消化器疾患 9 3.1 2 2/9(22.2)
心・腎不全 24 8.3 5 5/24(20.8)
内分泌代謝電解質 16 5.5 5 5/16(31.3)
そのた 15 5.2 6 6/15(40.0)

(2010年2月5日 第1回日本病院総合診療学会にて報告)

図1 主訴に発熱(不明熱を含む)がある患者の内訳(138例)

発熱グラフ

(2010年2月5日 第1回日本病院総合診療学会にて報告)

2009年の総合診療科入院患者の動向

2009年1月から12月までの入院患者の在院日数と入院患者数の動向(図2)について、調査を行いました。当院総合診療科における平均在院日数は16.3日、入院患者数24.2人/月という結果となりました。2009年に報告された2006年のDPC採用病院の全国規模の在院日数は、15.1日(当病院全体で13.3日)と比較すると、当科の在院日数は長いことがわかりました。そこで、当科における在院日数を延長させる要因について、さらに調査(表2)を行いました。

図2 平均在院日数と入院患者数

患者数推移

総合診療科のユニークな調査結果

総合診療科入院患者290例の「年齢」、「性別」、「当院の入院回数」、「救急車搬送における緊急入院であるかどうか」、「入院時の体温」、「脈拍数」、「採血検査(WBC、CRP)」、「主治医の違い」の9項目の調査を行った結果、高齢者における入院が、当科の在院日数を延長させている要因となっていることが分かりました。また、この結果からは、前年度在籍していた医師A1と医師A2の違いによって、在院日数が延長することがないようです。

表2 在院日数に与える因子について

全因子による多変量解析 ステップワイズ法による多変量解析
標準化
係数β
標準誤差 非標準化
係数β
p-value 標準化
係数β
標準誤差 非標準化
係数β
p-value
性別 -3.040  2.014 -0.088  0.132
年齢  0.194  0.048  0.254 <0.001  0.210  0.043  0.275 <0.001
体温  0.430  0.461  0.060  0.352
脈拍数 -0.021  0.067 -0.022  0.747
CRP  0.089  0.208  0.028  0.668
WBC -0.008  0.027 -0.021  0.755
入院歴数  0.359  0.277  0.078  0.197
医師負担度 -2.732  2.314 -0.071  0.239
入院主治医  2.763  2.038  0.080  0.176
入院患者の性別 女性(0)、男性(1)
医師負担度 予定入院・当日入院(0)、救急車搬入の緊急入院(1)
入院主治医 医師A1(0)、医師A2(1)

調査結果からの推測・考察

今回の調査結果から、去年を振り返ってみますと、大学病院などの基幹病院とは違い、当科では、地域に密着している高齢者中心の患者さんを、積極的に治療を行っていることがわかりました。特に、感染症では誤嚥性肺炎を含む呼吸器疾患が多く認められ、平均在院日数が延長する要因の一つと考えられました。また、不明熱の診断するにあたって、十分な日数が必要であったことも要因の1つとして考えられました。
2009年の総合診療科の在院日数を短くさせる意義としては、「寝たきり防止」や「社会生活への早期回復」という全人的医療の視点においても重要であっただろうことがわかりました。最後に、表1の分類のように多岐にわたる疾患を全鑑別することができ、当院総合診療科ならではのCommon Diseaseの診療に従事することとなります。

その他

記載内容についての説明は、当病院の研修期間中に聞いてください。電話およびメールでの内容確認については、一切答えられませんので、ご了承ください。