がん診療のご案内
Cancer Oncology
肺がん
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ダウンロード(PDF:550kb)はじめに
肺は呼吸をするための器官で、呼吸によって吸い込んだ空気から酸素を体内に取り込み、二酸化炭素を吐き出す役割をしています。口から入った空気は、気管を通り、左右の肺に分かれます。最終的に酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞にたどり着きます。
肺がんとは肺から発生するがんの総称です。肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞がなんらかの原因でがん化したものです。進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって広がっていきます。肺がんはその進行の具合、種類や遺伝子の変化の具合で治療方針が変わります。
症状
肺がんは症状が出にくい疾患です。検診や人間ドッグ、他の病気などで医療機関にかかっている時に発見されることが多くなっています。なおりにくいせきや胸痛、呼吸時のゼーゼー音、息切れ、血痰、声のかれ、顔や首のむくみ等が一般的な症状です。
肺がんの危険因子としては、喫煙(受動喫煙含む) 、特殊な原因としてアスベスト、じん肺や遺伝子の変化などが考えられます。
各種検査
一般(胸部単純X線検査)
レントゲン検査です。

■左肺上葉肺がんの例

CT検査(胸部)
体の断層写真が得られます。早期の肺がんの発見率が高くなります。

■CT画像 左上葉
FDG-PET検査
ブドウ糖に放射性物質を標識したものを静脈注射してがん病変の有無、広がりを調べます。
腫瘍マーカー
がんを持った体の血液、尿、身体組織中に正常より高い量をしばしば検知することができる物質です。血液検査で調べます。がんで上昇することが多いですが、必ず上昇するわけではありません。
MRI検査(胸部)
放射線を使用せずに磁気を用いて任意の断面写真が得られます。大血管への浸潤(広がり)の有無を見る時等に施行します。
注意
病変(肺癌)を発見する検査では肺がんを確定診断はできません。肺がんを確定診断するには、細胞を顕微鏡で確認することが必要です。
痰の細胞診

喀痰の腺癌細胞
提出された痰を顕微鏡で観察します。
気管支鏡検査
内視鏡の一種である気管支鏡を気管に入れて気管支や肺を調べます。この管を通して細胞や小さい組織標本を採取し顕微鏡で観察します。
生検
組織の標本を採取することを生検といいます。組織を採取するためにCTを使用し身体の表面から針を用いて生検することや、必要があれば外科的に病変部(腫瘤)を切除することもあります。
肺がんの病期分類(ステージ)
上記で『がん』と診断された場合、進行度(がんがどれくらい進行しているのかという)を確認していきます。
ステージⅠ(1期) |
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ステージⅡ(2期) |
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ステージⅢ(3期) |
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ステージⅣ(4期) |
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- がんの大きさ(広がり)
- リンパ節への転移の有無
- 他の臓器への転移
・・・などに分類できます。
その場合の検査として、がん診断を参照や他の臓器を調べる検査として下記などがあります。
MRI検査(脳)
脳転移の有無を調べます。
RI検査(骨シンチグラフィ)
骨への転移の有無を調べます。
治療法について
肺がんの病期分類(ステージ)にあわせて行われます。
手術療法
手術によってがんを取り除きます。最も根治的に近い治療法です。標準的な手術は病巣のある肺葉切除術です。病状によっては胸腔鏡による手術も行われます。
薬物療法
身体の中からがん細胞を消滅させるために抗癌剤を使用します。最近は、免疫チェックポイント阻害剤という新しいタイプの抗がん剤が使用されることもあります。抗癌剤を静脈注射あるいは内服で投与します。

放射線療法
体外から肺がんに放射線を照射します。現在は、強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiotherapy:IMRT)という高精度放射線治療を標準治療としています。強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)とは、正常組織の照射線量を抑えつつ腫瘍部分に放射線を集中して照射できる画期的な照射技術です。
進行した肺がんでは化学療法に併用する場合もあります。