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婦人科部長の闘病記 Part2

原三信病院婦人科便り(2)
術後 〜腹筋は100回くらいできるようになりましたよ

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

前回の入院闘病記が好評で、その後の経過はいかがですかと患者さんたちからお尋ねがあるようになり、気を良くして第2弾を書いています。片岡です。

患者さんにとっては「退院後」の人生の方がうんと長い上、一旦通院期間が終わってしまうと気軽に相談もできなくなりますね。病院に電話しても、電話交換手→外来受付→手練の看護師さん、をくぐり抜けて主治医までたどり着くツワモノはそういません。なぜあのようにガードが固いのか、不思議に思われることと思いますが、あれは「マンション投資勧誘詐欺」など、世間知らずの医師を対象に、「オレオレ詐欺」が横行しているから、なんですよ。患者さん名のみならず、大学病院のえらい先生や先輩の名を騙って、「儲け話」を寄越すので、うっかり電話口に出ようものなら延々と「一口3000円、いかにマンション投資で儲けるか」の壮大なる計画に巻き込まれそうになります。そんなに儲かるならあなたがすればいいのに〜。いやはや

平成27年12月末に手術を受け、退院後しばらくはお腹の創のお世話に明け暮れていました。原三信病院では現在、創を吸収糸で縫合し、入院中はカラヤヘッシブという浸出液を吸収するテープを貼り、創が十分乾いたところでご本人にビジダームという絆創膏を売店「さんしん」にリハビリも兼ねて買いに行ってもらい、貼り替えて退院していただいているのですが、この時は私の執刀医をしてくださったS先生が
「私の大切な人の手術なのよ」
と泣かせるセリフをおっしゃってくださって、持参された、ちょっと変わった創テープを貼り付けていたのです。それはダーマボンドという、いわゆる医療用アロンアルファで、メッシュで創を覆い、その上からそのボンドを垂らすとあ〜ら不思議、創が固まりますよというシロモノ。ちょっと高価なんですわ。コストが高いので原三信病院では導入しようか迷っていたものですが、かゆい。どうしようもなく痒い。なにはともあれ、痒い。
特別扱いなのに本当にどうしようもなく痒く、全神経が腹の創に集中してしまいます。

手術の時には滅菌された手袋とマスク、手術着を着用するのですが、医師10年目あたりからまずラテックス入りの手袋で蕁麻疹が出るようになり、あえなくラテックスフリーを選ばざるを得ず、やだなーと凹んでいたら(ラテックスフリーの手袋は高い)ここ最近、手術のマスクで口の周りがかぶれて「田吾作」みたいになってしまい、こちらも特別仕様マスク(値段を怖くて聞いてない)になったばかりと言うのに、ついにダーマボンドまで!S先生に申し訳なくしばらく貼ったままにしておいたのですが、テープの周囲に沿って壮大な蕁麻疹が出現するにあたり、泣く泣く剥がしてしまう羽目になりました。しかし、創はまだまだ生々しいことこの上ない。
仕方がないので新年早々「さんしん」で大人しく1枚770円のビジダームを購入し、貼り替え貼り替えしておりました。このビジダーム、ちょっと大きめの折り紙くらいの大きさで、はさみで自分の都合の良い大きさに切って使用します。

実際ビジダームを貼ってみて気がついたことは、患者さんの説明で皮膚科の友達に教わった通り「基本は4〜5日おきに貼りかえ、汚れたらそこで貼りかえ、あんまり幅広く使わなくても創ぎりぎりでいいですよ」と繰り返していたのですけども、あんまり幅がないと、周囲からお風呂のお湯が沁みてしまい、結局毎日貼りかえる羽目になるということでしょうか。根が貧乏性なのでちまちまぎりぎりで切って貼っていたのですがちょっと大きめにざっくり切ってばーん、と景気良く貼った方が長持ちすることが判明いたしました。
この創の上から入院前に準備しておいた「ニッパー」を着用し、創をぐーっと押さえておくと動きやすかったです。産後もウエストを締めるこのニッパーは大活躍すると思うのですが、創が動くたびに自分の腹の肉といっしょにたぷんたぷんと揺れて痛い上、創は横に引っ張られると肥厚性瘢痕、いわゆるミミズ腫れになるため、お勧めです。腹腔鏡手術の小さな創には全く必要ない情報ですが、開腹術で10センチほど切られてしまう予定の方はニッパー必須。外来でもしつこくお勧めしているのですが、皆さん信じやがらねえ。。。持ってきた試しがありませんが、本当にお勧めです。別にワコールでもトリンプでも別の高級メーカーでもなんでもいいので、ニッパー。「さんしん」に入れちゃおうかな。

高校時代の親友が私より2〜3年先に子宮摘出を経験しており、彼女が「1ヶ月くらい痛かった、無理しない方がいい」と言ってくれていたにも関わらず、1月8日から執刀手術の予約を入れていたのでニッパーが大活躍でした。一度ニッパーなしで手術をしていたらお腹にふん、と力を入れた瞬間じ〜んわり痛みが広がり、脂汗が出てきて参りました。手術には体力と筋力が割と必要です。そしてやっぱり1ヶ月くらいは痛かったです。術後1週間くらいで動かなければ痛くなくなりましたが、何かの拍子にずきっとするので行動範囲が狭まりますね。長年体力増進に、と毎日腹筋運動をしていたので術後もやおらしようと構えると、・・・起き上がれない。私の腹直筋は縮むことを忘れたかのようにぴくりともしません。そして例の「犬に噛み付かれたみたいなところ」が痛むんですわ〜。いや、だから体操をしなきゃいいわけですが、かさぶたを剥いでみたくなるあの感じと一緒で、痛くなってみたい、、、ような気がしてました、毎日。よって腹筋は1ヶ月くらい無理です、と申し上げます。

よくあるご質問に、「お風呂はいつから入ってもよいでしょうか」がありますが、子宮全摘術の場合は開腹でも腹腔鏡でも2週間くらいは湯船に浸かれません。腟の奥が10センチくらい縫われていて、その先はお腹の中、ですから万が一感染など起こそうものならばらばらっと糸が解けて創が開く恐れがあるからです。しかし、手術が真冬に行われたため、お風呂に浸かれないと寒い。本当に寒いので、不良患者の私、退院してから3〜4日で音を上げ、止める高校生の娘を振り切って湯船にじゃぽん。。。ふふふふ。大丈夫でしたよ。よって開腹術で子宮全摘術をした方は退院後すぐにお風呂に入れます、と申し上げます。 一方、腹腔鏡手術では腟壁を電気メスで凝固しながら切りますのでもう少し長くかかります。ま、こちらは「生きながら犬に食われる」的な痛みはありませんからね〜。それくらい我慢してくださいと申し上げたいところです。(自分は我慢できなかったくせに、ですよ)

現在術後3ヶ月が経とうとしているのですが、腹筋100回くらいはできるようになりました。それ以上は試していないので何回までいけるかわからないのですが、術前の状態にほぼ戻り、日常生活に全く支障はありません。ただしガードルは未だ着用しています。行きつけの三越トリンプさんで「ガードルをつけないでいるのはブラをつけないでいるのと一緒」という衝撃的なコピーを見かけており、そういう意味では術前まで「ノーブラの腹」でいた私ですが、現時点ではまだガードルがないとなんとなく手術中は心許ないです。

ちなみに、2ヶ月くらい経ったところで縫合糸が(たぶん3-0PDSという糸)が創口から出てきました。ちくちくするので引っ張って取ろうとしたらこれまたなが〜く出てきて、15センチくらいですっぽんと抜けました。・・・これが多分、一般の方には難しい技と思われるので、糸が出てきたときは無理をせず婦人科外来にお越しください。私が切って差し上げます。全部抜くのはちょっと気持ちが悪いし、基本的には体に吸収されてしまう糸なので、そのまま放置していても大丈夫なものです。ただ、表に出てくるとちくちく気になりますよね。わかりますわかりますー

患者さんたちが一番気になるのは術後いつになったら元気になるのでしょうか、という点だと思うのですが、3ヶ月もすれば周囲の人間はあなたが手術をしたことを忘れます。その事実は忘れなくても、たぶん日付は忘れます。主治医の名前なんてあっという間に忘れますし、平成何年だったかもあやふやで、子宮を取ったか卵巣を取ったかの記憶も定かでなくなります。オットなんて特にそういう生き物。
でも、おそらくご本人は2年くらい主治医と日付を忘れてないという印象を受けるので、真の意味で「元気になる」には2年くらいかかるんじゃないかと思います。手術は長い人生の一場面に過ぎないし、主治医、執刀医は名前を忘れられてこそ本当の意味でお役に立てたのではないかなあと思う今日この頃。手術後には片岡だったか片山だったか、いたねえ、そんな人、と言われるのが私の理想です。