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婦人科部長の闘病記 Part26
原三信病院婦人科便り26 卵巣嚢腫②
原三信病院 婦人科 片岡 惠子
ぼーっとしていたら春が来そうです・・・
正直に言うと、2月は忙しかったです。
理由は働き者の同僚が産休に入ったから~。
めでたい理由ではありますが、絶対量としての仕事が、そのまんま残されたメンバーにかかります。しかも、彼女が働き者だったがゆえに、その仕事量が半端ないの・・・
ま、人類のため、日本のため、ひいては自分のためですからね。新しい人員が補充される4月まで、二人で頑張りますよ。早く4月にならないかな~
さーて今回はチョコレート嚢胞のお話し。
チョコレート嚢胞、実は最初は「あだ名」でした。
最近はテレビや雑誌でも「子宮内膜症」が取り上げられたりして割と周知されていますね。
子宮内膜症とは
「お腹の中に血豆ができる病気」
なんですわー。
その血豆をせっせと顕微鏡で観察してみると、子宮の中にあるはずの「子宮内膜」によく似ています。そっくり。
子宮の中にいないといけないのにお腹の中に散らばってしまい、しかも子宮内膜であることを忘れていないので、生理のたんびに「出血する」。これが卵巣に出現し、隙間と癒着を作り、大きくなってきたのが「チョコレート嚢胞」です。古い血液が中に溜まっているので、私たちが手術中に中味を開けると、中から溶けたチョコレートのうような液体が流れてくるため、「チョコレートみたーい」と名前を付けたら、そのまま正式名称になっちゃった、と。
ごくごく正式には「子宮内膜症性卵巣嚢胞」ですけども。ハイジの本名はアーデルハイドだけど、みんなハイジとしか呼ばないように(ロッテンマイヤーさん以外)、チョコレート嚢胞ももはやチョコレート嚢胞、としか呼ばれません。
かわいい名前のチョコレート嚢胞、ですが、性格はきつめ。とても厄介。
できる原因は未だによく分かっていません。色々ある諸説の中、割と信じられているのは
「月経血逆流説」ですね。生理の時に子宮からの血液が、卵管を伝ってお腹の中に流れていくことがあり、その流れに乗って内膜の細胞が運ばれていくというもの。実際、月経中の患者さんのお腹を覗いてみると、割とお腹の中も血まみれになっていることが多く、信憑性は高いです。
ですが、内膜症は「月経血逆流説」だけではなかなか片付けられない部分もあって、ですね。
内膜症って他の臓器にもできることがあるんですよ~
お腹の中だけではなく、肺や脳にもできたり、外陰部(つまりおしも)にも出来たり。他にはお臍や帝王切開の創の中、とか。
どうしてこんなところに??という場所に出来てしまうことがあるので、他にも色々理由があるものと思います。
私が研修医になったばかりの頃は、40代がチョコレート嚢胞の主力で、30代はときど~き、20代は珍しいといった印象でしたが、最近は低年齢化しています。18歳でもでっかいチョコレート嚢胞に苦しんでいたり、20代でも内膜症の癒着や、それによる生理痛の激しいのに苦しんでいたりして、本当に
「女性は戦わねばならない戦場が多いのう・・」
と思います。戦士。
長くなったので、治療については、次回
・・・なんとなく連載みたいになっていますねー