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婦人科部長の闘病記 Part27

原三信病院婦人科便り27 卵巣嚢腫③

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

1月は行く、2月は逃げる、3月は去る・・・
という言葉とおりに時間が過ぎていますが、皆様お元気ですか。
はっと気がつくと、5月でしかも元号まで変わりました。

転勤シーズンも終わりましたね。
でも不思議なんですけど、なんで3月に一斉に転勤して、4月が年度初めになるんだろう。
会社ごとに転勤の時期がずれてれば、世間に大きな影響は出ないというに。
つまるところ、日本の行事のあれこれは
農作業に邪魔にならない
ように作られたものではないか、とにらんでいるのですが、どうでしょう。
もう農業に関係の薄い業種はずらして転勤や異動を決める、にしたらいいのにー。

医者は、若いうちは1~2年で病院を異動します。
原三信病院にも新しい先生が着任されました。
いろんな病院でそれぞれのシステムや方法を学んで腕を磨くのが目的・・・だと思う。
私の尊敬するお師匠さんは

「手術をする人間は、新しい風を入れられなくなったら、引退だ」

と、常々おっしゃっておられまして。
こういうことを老体の身で言うからステキ。

見聞きしたモノに抵抗を感じることなく、ワクワクできるかどうか、を自分に問うことが大事。
人間、古くなってくるとフットワークが重くなり、新しいモノを運んでくる若者を邪険に思ったり不安に思ったりする。
古代ギリシャの書物にすでに

「今頃の若い者は云々」

という記述があるそうで、いつの世にも次の世代を疎ましく思う(そして妬む)気持ちはあるのかなと思います。いや~若い人は子宮も卵巣もぴかぴかですからね。それだけは化粧品ではなんともなりませぬ。妬むわ~

私の自戒の言葉として
「老いたる麒麟は駄馬にも劣る」
→若いときにどんなに優秀な人(千里を1日で翔ける麒麟)でも、老いてくると劣った人間(駄馬)にも及ばなくなる、という意味
麒麟でも年を取ると走れなくなると言うに、最初から駄馬だったらどうなるのー怖い
が常にあります。4月から婦人科にも若い力が入ってきてますので、新しい風にワクワクたのしみ!という気持ちを持ち続けていられるように仕事をしたいです。

さて、前回のチョコレート嚢胞の話の続き、治療について。 チョコレート嚢胞は長径が4センチを超えると手術をした方がいいと言われています。 理由は二つ。

  • 1) 癌化することがあるから。
  • 2) 癒着が不妊症の原因になることがあるから。

1)はチョコレート嚢胞を発症している方を追跡すると、1000人中7~8人であると言われています。ただし40歳を過ぎると確率が跳ね上がるうえ、卵巣がんになる年齢が50歳前後と一般の卵巣がんに比較して10年程早いため、担当医は気が気ではありません。しかも、癌化は後述する内膜症治療薬を飲んだり注射したりしていても無関係に引き起こされるので、もう、ロシアンルーレットのように、どこに弾丸が入っているのか分からないピストルをお腹の中に抱えていると想像して欲しい。
しかも、しかもですよ。癌化するときは大抵、7~8年経過をみてから、なので。

仲良くなってから、その患者さんが癌になる。

・・・に、担当医は耐えねばなりません。
医者も人間ですから、数ヶ月おきにくる馴染みの患者さんとは友達みたいになっちゃいます。そして「大事な人」になっていく。いい人だな、と思っていたその人が、急に具合が悪くなってしまう・・・これ、結構きつくないですか???
実は今まで私が関わってきた患者さんのうち、二人ほど癌化してしまいました。
長く長くおつきあいがあり、ちょっと外来の期間が空くと
「元気なのかしら」と気にする程度には仲良くなっていた人を救えなかった、というのは本当に堪えます。辛いです。
よく見聞きする話の中で、医者に冷たくされた、意地悪された、という話もありますが、大抵の医者はお人好しで割とお育ちが良くて、過度に親切心を持つ人が平均的です。私もその例外にきっと漏れないので・・・・患者さんが癌になると、ものごっつ辛いですー。
だから、

癌化の可能性が高まる
40歳以上、4センチ以上のチョコ-レート嚢胞撲滅キャンペーン

を、張らせて頂いています。
つまり、お子さんをもうける希望がない方で、チョコレート嚢胞が4センチ以上だったら即、手術。
それはひとえに

「誰も癌にしてはならぬ(誰も寝てはならぬ、の感じで、重々しく)」

という気持ちからです。
個人的に、もう誰も、仲良くなった大事な人を亡くしたくないのです。
たまにその究極にお節介な私の気持ちを振り切って

「癌になるのは別に構わない、手術しません」
とか言う、困ったちゃんがいますけど、未治療の癌で死ぬことがどんなに惨めで辛いか、知らないからだと私は思う。かの有名なマザーテレサが
「この世で一番悲しいことは死ぬことではなく、惨めに死ぬことです」
とおっしゃっておられたのに激しく同意です。 死ぬときは誰でも死ぬ。それは順番で、いつかは死ぬときがちゃんと来ます平等に。 でも、「惨めに」死ぬことは絶対に避けないといけません。それはもはや、遺していく大事な人たちへのマナーでもあると、私は思います。

長くなってしまったので、2)については次回。