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婦人科部長の闘病記 Part35

原三信病院婦人科便り Part35 手術の心得⑤

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

史上最強の台風が近づいているそうで・・・
こんなに気象図を毎日じっくり見たことがあるだろうか。いや、ない。

コロナも台風も迷惑だ(きっぱり)。
威力業務妨害で逮捕したい。逮捕したことないけど。

この先どうなるか分からないことに気をもんでいても仕方がないので、次行きます、次。
まあ死ななければどんな目に遭っても再起は可能。元気が一番。

手術の時、「家族が来ないと行けませんか」とのお尋ねが驚きとともに発せられますが、この、「日本の医療における、家族問題」は結構根深いです。
そもそも戦前の法律には家長権なるものが明記されていたようで、おとっつぁんがなんでも家族のことを決めるという理不尽かつ横暴な制度がまかり通っていたようです。

今は元号も変わって令和だというのに、未だに「家族制度」は日本では強く影響されています。
手術の時も、自分だけでは決めることはできない、というのが大まかな日本の暗黙の了解になっています。よって、大体どこの病院でも病状を説明したり今後の方針を決定したりするとき、どんなに成人して知性レベルに問題なくても、「御家族のご意向」を尋ねる傾向にあります。御本人がどんっなに子宮を摘出する!と決めても、おっかさんや夫が大反対し、術式が覆ることなんて、にちじょうちゃめしごと(日常茶飯事)なんですよ、おくさん。
これが諸外国では事情が異なります。
以前、ベルギー人の手術に携わったことがあるんですが、ご家族のご意向を、と尋ねると

「わたしは成人しています、わたしがわたしの体のことについて決定して何が悪い」

家族の同意は必要ない、との見解・・・
当時はまだまだ「家族の同意の署名」が今よりもっと幅をきかせていましたので、病院上層部を巻き込む大騒動の上、ベルギー大使館に問い合わせるというすったもんだになりました。
大使館の返答は
「自分のことは自分で決めて良い、家族の同意は必要ない」とのこと。
結局、パートナーの同意さえ必要ないと言われ、そのまま私は執刀しちゃいました、けど。

日本の法律というか、世間の目はなかなか、本人の意志だけでは動かないのです。

よって冒頭に戻りますが、

手術の時、原則、立ち会いと術前説明に御家族の同席が必要です。

この「原則」がミソで、どうしても都合が悪い人は相談ね、という意味が込められています。
ただし、「だれにも内緒」には出来ない。
術中、何か急変があったとき、麻酔がかけられて口がきけない御本人の代わりに、誰かが方針を決める必要があるから、です。大抵、なにごともなく手術は終わるわけですが。

実は手術とは「割と」危険なことなのです(いまさら)。

だって、はさみとかメスとか、刃物を他人に向けちゃうんだよ? 怖くね?
日常生活ではすご~く気遣って、はさみを受け渡しするときも、柄の方を向けて渡したり、しませんか。しますね。ぽいっと刃の方を向けて渡したりなんかしたら、おかーさんに叱られたりしましたね。ほら。

でも柄を向けていては手術になりませんから、はさみやメスで切ったりはったりするわけですよ。危なくないはずはない。
よって、少ない可能性ではありますが、御本人に予想の斜め上のことが起こってしまったら、色々相談したいじゃないですか。一番多い相談事は

「輸血していいですか」
「(腹腔鏡手術の場合)開腹していいですか」

ですけども。
よかれと思ってしたことが裏目に出ちゃったりするんだ、往々にして。

「命を救う」
おおよそ医者はこの方向で頑張るのは基本方針として、細かなことは患者さん毎に異なる事情や背景がありますので、一概にこちらだけで決めてはいけないこともたくさん、あります。
なので、大変お忙しいところ失礼ではありますが、御家族にも仕事を休んで頂いて、説明を聞いたり手術に立ち会って頂いたりするのが「原則」なんですよ。
で、私は言いたい。人生のピンチに駆けつけてくれる人を一人くらいは作っておく。
これは生きていく上で手術に限らず、大事な生命活動ではないの?と。

人間は、
人と人との間、と書くでしょう?
つまり、その「間」がなくなったら、ただの「間抜け」なんですわ~

きっつ~

と思ったあなた。今日から頑張ろう。私もがんばる。