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原三信病院婦人科便り Part52

原三信病院婦人科便り Part52膣カップ

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

・・・はっと気がつくと、2月も半ば。
時間が経つのは早いものですねえ。
年々、時間が短くなっている気がします。

ほらほら、この間さあ・・・

と話していたら、よーく考えたらおととしのことだったり、ずいぶん昔のことだったり。
うちのムスメはとうの昔に成人しているのですが、自分の中では5歳くらいまでで成長が止まっているため、未だに、あの子がひとりでトイレにいけるなんて!あの子がシャンプーの詰め替えをしてるなんて!とか涙ぐむよね。いやいや、年取るとほんとう~に涙もろい。

当初おっかなびっくりだったコロナワクチンにも3回目となると慣れてきましたね。 まだまだ一般には流通していないようですが、きっとそのうち皆さんの順番も回ってくるはず。ワクチンの是非について未だに私にお尋ねは絶えないが、やっぱり推進派だよ。 まあ、大の大人でもあんなにしんどくなるのだもの、いたいけなお子たちをワクチンで痛めつけてよいものか、ためらうお母さんは多いと思う。でも他に良いアイデアがあるかと言えば現時点ではないので、もうこの際、仕方ないと心得よ。 ちなみにうちのムスメは私の中では未だに5歳だが、有無を言わせず打たせた。参考にはならないが。

さて、YouTubeだの、Instagramだのと一般人が動画などを通じて自分の考えを聞いてもらうツールが増えてきた昨今、いろんな人がいろんな意見を言えるようになりましたね。私はもっぱら動画や写真、ご意見ご感想を見たり聞いたりする観客の一人に過ぎませんが、この間、あれ?と思ったことがあったので、一産婦人科医師として、意見を述べておきます。

私よりはぐっと若い、女性産婦人科医師の人気のチャンネルがあるんですが、そこで腟カップなるものを強くお勧めしておられました。

この腟カップ、トイレの掃除の時に使う、昔ながらの「すっぽん」のさきっぽにとてもよく似ている。
大体液体が50ml?100ml?くらい入るくらいの、そのシリコン製(だと思われる)のカップを、こともあろうに生理中の子宮の入り口にはめちゃうのだ。
タンポンは生理の血を吸収する脱脂綿に紐がついたような構造だが、このカップは柔らかい素材で生理の血を受け止め、外に出ないようにする「すぐれもの」らしい。
彼女いわく、使い方に「ちょっと」コツがいるが、血液の量を自分で確認できるのと、使いこなせるようになると、ナプキンがいらなくなるので、ちょ~うお勧め!らしい。

危ない。
非常に危ない。

この動画にもやもやしていた時、タイムリーにこの腟カップが3日間ほど外れなくなり、死ぬ目に遭っているので、取ってほしいというご依頼が来た。

さもありなん。

敵はシリコン製、うまくはまってしまうと、陰圧がかかってしまうため、子宮の入り口から自分では絶対に外せなくなる。
依頼された私も鉗子を使って引き剥がさないと外せなかった。
しかも、普通のナプキンじゃなくて、こういった腟カップを使おうかなというご婦人はきっと、日頃、生理の量が多くて困っている人なんじゃないかと思う。そういったご婦人が、あのような柔らかいチューブのようなものを子宮の入り口にかぽっとはめちゃった場合、血液が多少は子宮や卵管、最終的にはお腹の中に逆流するだろうことは想像に難くない。

何がいやって、腟から子宮へ、子宮から卵管・卵巣へ、最終的にはお腹の中へばい菌が入っていくのがものすごく、やだ。腟カップを挿入する時に滅菌手袋を用いる用意周到な女子がどれくらいいらっしゃるのであろう。腟カップ、繰り返し使えるらしいが、滅菌をごく一般的な家庭でできるもの?ミルトン?(哺乳瓶の洗浄用の洗剤)・・・いや、せいぜい、みんなだいすきミューズで洗う、くらいなのでは。きっと多くの女子は水道水。ほげえ・・・

腟や子宮の中に入れる異物として、避妊リングやタンポンなどがあるが、そういった異物はやはり「感染」の危険性が常につきまとう。大体、救急外来に来る婦人科のお客さんの一番多いのが生理痛の次に骨盤腹膜炎(子宮や卵巣・卵管にばい菌が入る)なのだからして、危険なことには近寄らない方がいい。それでも抗菌薬の点滴で治ればよいが、お腹の中に膿が溜まって、結局手術になる女子も多いもの。怖いよ。

ついでに力説しておくが、今はやりの子宮内膜症も、生理の血の逆流が原因の一つ、とも言われている。

心配なのは、そういったひどい目に遭った女子はきっと自己責任で片付けられてしまう点である。腟カップが外れなくて疲れ切っていた私の患者さんも、きっと
「私がこんなもの、使っちゃったから~」と反省し、二度と使わないと決心するにとどめ、きっと宣伝したその先生にクレームの電話をしたりはしていないと思う。

現役の産婦人科医師が良いとお勧めするのはメッセージとしてはとても強い。

強いからこそ、そういう怖い側面もありますよ、と注意喚起も必要なのではないかと私は思う。

いろんなことを考えると、動画で発信なんかできないやん、と言われそうだが、その通りである。いろいろ考えるともはや何も言わないのが一番という気もしてくる。もちろん、議論は大事なので、問題提起のきっかけとしてはとても便利で、よいツールである。
だがしかし、情報は鵜呑みにしないで、相手が専門家だろうがそうでなかろうが、自分の頭で一回考え、リアルな友人や家族にちょっと相談してから使用をお願いしたいところです。そのための学校であり、今まで受けてきた試験なんだからね。