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原三信病院婦人科便り Part53

原三信病院婦人科便り Part53性別適合手術について私のスタンス

原三信病院 婦人科 片岡 惠子

今回はちょっと重めの議論で攻めたい。
いろいろお問い合わせがあった件、おまとめします。

性同一性障害が世間一般に認知されつつありますが、それに伴い、2018年から戸籍を変更するための、いわゆる性別適合手術が保険適応になりました。
保険適応になるまでの道のりは長く遠く、関係者の方々の血と汗と涙の結果ですね。

いつの世も少数派には冷たい世の中。
まあ、皆、自分が生きていくのに必死だし、自分が冷遇されているとき
自分には関係のない部分で何か起きていても関心がないか、むしろ憤りを感じる、ちっさい人間は多いものです。ほんとにちっせえ

性別に違和感があるという状態を、「疾患」と規定することはさておき
戸籍を変更するのに「生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」と「他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること」
があげられているため、男性が女性に、女性が男性に戸籍を変更するために、ある程度外科的な介入が必要になってくる、と解釈されます。

なぜか原三信病院は、私が着任する以前より、精神科の先生方から

「外性器と内性器が正常女性であることを診断書にしたためてくれたまえ」

というご依頼が多かったため、その流れで(たぶん前任者がお引き受けされたんでしょうね)そういった診断書を求めて受診してくる、男性を自認している、身体的女性が後を絶たないのですが、それは別にかまいませんのです。仕事だし。

ただし、私個人は

正常に機能している、正常な子宮や卵巣を摘出すること

に対して、非常に抵抗感があります。

戸籍上の性別を変更する際の取り決めを考え、こうした人は、何をどう、恐れているんだろう、と思うのです。もう一回性別を変更できなくするため?それは、なぜ?

戸籍の性別なんて、どっちでもええやん・・・
と、性別があまり影響を受けなくなった50代の私は思う。

むしろ、「未婚の子がいないこと」のいわゆる「子なし案件」の方が個人的にはわかりやすい。呼び出してしまったもの、子が成人するまでは責任をとれ、というのは至極真っ当です。いやむしろ、急ぐのはどうして、とか思う。
お母さんがほんとはお父さんで、性別が変わってもあなたを愛していることには変わりがないのよ、というのはなかなか子供にはわかりづらいので、もし自分が性別に強烈な違和感があっても、子への責務は全うするだろうと思います。いや、私は女性を自認していますけども(中身がおっさんとはよく言われるが)。

診療上、婦人科でお会いするのは主に、見た目は女性で中身は男性、という方に限られていますが、周囲の人に見せない部分の肉体まで全部変えないと違和感が強い人というのはごく少数で、大方は服装や行動パターンさえ許されればおおよそ精神的にも落ち着き、一定の社会生活が送れる人が多いのじゃないかと思いますが、その点どうなんでしょう。

そういった、肉体の違和感もさりながら、それとなんとか折り合いはついている、本来手術が必要ない人たちにまで、手術を強いる今の法律の方が間違っているんじゃないかなあ。
戻れるようにしたっていいんじゃないのかなあ・・・
そんなに突き抜けちゃっていいものだろうか・・・
と思っております。

だって、「人間だもの」。
後悔することだって、思い直すことだってありますよね、人生には何度も。
その「ゆらぎ」こそが芸術や文学やその他諸々の美しい何かを作ってきたではないですか

それに、手術って、そんな簡単なものではないんですよ、何度も口を酸っぱくして言うと。
気軽にちょいちょいちょ~いとできるものではなくて
多分もう二度と元には戻せないし、合併症や後遺症があったりするかもしれないし

そしてね、最大の理由は

たとえ子宮や卵巣や卵管を摘出しても、たとえ陰茎を作っても、100%男性にはなりません、
ホルモン投与で男性らしくはなっても、やっぱり女性特有の病気にはなる可能性がありますよ、

というジレンマの存在です。

悲しいかな、今の医療技術では、女性から完璧な、混じりけなしの男性に変更はできない。
つらい

ホルモン投与を行うと、見かけはすっかり男性になりますので、
男性トイレに無理なく入れるようになるとは思う(今だけ男!とか叫べばある一定の女性も入れるとは思うけども、年齢制限があるよね自称にも)。男性トイレには個室トイレが少ないとの情報もあるが、それはまあなんとか頑張るとして。

でも、婦人科の待合室に一人で座れるか?

の、問いにはおそらく皆が否!と答えるのではなかろうか。
男性が女性下着売り場に一人で入れないのと同様、きっと耐えがたい苦行なのではないだろうか。

もちろん、私には男性・女性の欄に丸をつけるように言われて、・の部分に丸をつけそうになる悲しみは真に理解はできない。
わかると言ってしまった段階で、それはやっぱり嘘なんじゃないかと思うわけです。
でも、戸籍の性別変更の条件に、「生殖腺うんぬん」がなくなってしまえば、不必要な、健康を害するかもしれない手術を避ける人が増えるなら、そっちの方が現実的で、よい考えのような気がしますね。

この事案を、自分の身に起こっていることとして考えられる、有識者による戸籍法の改正を望みます。

・・・というわけで原三信病院では性別適合手術の認定を取得していません。
数々のお問い合わせありがとうございました。