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胃がん
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ダウンロード(PDF:550kb)胃がんとは
胃癌は、長年にわたって日本人の癌による死亡原因の一位を占めてきました。癌検診の普及と診断・治療技術の向上により、胃癌の治療成績は向上しましたが、日本人の胃癌の罹患率は、現在でも男性では最多で、女性では、乳癌、大腸癌につぐ第3位を占めています。また、人口の高齢化に伴い、胃癌の患者数は、男女とも依然として増え続けています。
症 状
腹痛、悪心、嘔吐、食欲不振など。早期胃癌では、全く症状がないことが多いです。
診断法
病歴・診察、内視鏡、胃透視、超音波検査、CTなど。
(図1)胃癌の内視鏡像
治療法について
最新の「胃癌治療ガイドライン 2018年1月改訂 第5版」に準拠し、患者さん一人一人に応じた最適な治療の選択を心がけています。
- 内視鏡的粘膜剥離 (ESD)
ごく早期の粘膜内に限局した癌に対しては、内視鏡的切除の適応が検討されます。最も低侵襲で、体の負担が軽い治療です。治療は、主に消化管内科が担当します。
- 手術
内視鏡的治療が適応できない胃癌に対しては、手術が考慮されます。胃癌治療ガイドラインに準拠して、主に、早期胃癌に対しては腹腔鏡手術が、進行胃癌に対しては開腹手術が適応されます。
腹腔鏡下胃切除術
手術創は腹部に5-6カ所ずつで、いずれも1-2cmと小さいので、比較的低侵襲で、術後疼痛が少なく、迅速な回復が期待できます。胃を、周囲リンパ節を含めて切除した後、残った胃と食道や十二指腸、空腸などと吻合し、再建します。腹腔鏡手術は術中出血や高度な癒着、周囲臓器に浸潤した癌などには対処が困難なことがあり、その場合には、安全を最優先して開腹術に移行することがあります。
(図2)再建後の図(ビルロートⅠ法)
- 腹腔鏡下幽門側胃切除術
胃の肛門側約2/3を切除して、十二指腸または空腸と吻合します。腹腔鏡下胃切除の中では、最も頻度の高い術式です。 - 腹腔鏡下幽門保存胃切除術
胃中部の早期癌に対して、適応されることがあり、胃の出口である幽門を保存して胃を部分切除する術式です。 - 腹腔鏡下噴門側胃切除術
胃の口側約1/3を切除して、食道と吻合します。術後の逆流性食道炎を予防するために、噴門形成という操作を追加します。
(図3)再建後の図
- 腹腔鏡下胃全摘術
胃を全摘し、食道と空腸を吻合します。一般には、再建後にYを逆にした形に見える、Roux-en-Y (ルーワイ)法で吻合します。
(図4)再建後の図(ルーワイ法)
(図5)術中操作(左胃大網動静脈周囲の操作)
(図6)術中操作(膵上縁の操作)
(図7)術中操作(胃小弯側の操作)
(図8)術中操作(縫合操作)
開腹胃切除術
進行癌に対しては、開腹胃切除、再建術が施行されます。胃切除の範囲と再建法に関しては、腹腔鏡手術に準じます。
- 腹腔鏡下幽門側胃切除術
- 化学療法
術後の癌再発を予防するため、約1年の抗癌剤内服による化学療法が必要になることがあります。また、手術適応のない進行癌や癌再発の治療のためにも施行されます。使う薬剤は、5FU(ファイブエフユー)系内服薬やシスプラチン, オキサリプラチン、ドセタキセル、分子標的薬(トラスツズマブ、ラムシルマブ)などです。
入院期間について
手術後は、1-2週間の入院治療が必要です。
手術にともなう合併症
以下の様な合併症を生じる可能性があります。
術中合併症
- 出血
- 多臓器損傷
術後合併症
- 術後出血
- 縫合不全
- 吻合部狭窄
- 創感染症
- 腹腔内膿瘍
- 膵液瘻
その他の予期せぬ合併症
手術に際し、予期せぬ稀な偶発症が起こる可能性は皆無ではありません。とくに、腹腔鏡下手術では、立体的な視認が難しいこと、鉗子を用いた間接的な操作が主であることから、予期せぬ偶発症が起こりえます。これらの偶発症が発症した際は、迅速に最善の治療を行うとともに、病状についてご本人・ご家族に十分な説明を行います。