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診療科紹介

Medical Info

骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome; MDS)

《どんな病気?》

骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄中にある造血幹細胞レベルでの異常クローンが発生し、正常造血が抑制されることにより、生じてくる病気です。異常クローンよりつくられる造血細胞は寿命が短いものが多く(無効造血)、正常造血の抑制とも合わせて、汎血球減少が生じてくることとなります。更にMDSを起こす異常クローンの中には増殖能力が亢進してくるものもあり、骨髄もしくは末梢血において20%を超えるほどに増殖してくると、急性白血病となります。言い換えると、MDSは前白血病段階としての側面もあることとなります。

《症状》

MDSの症状は、下記に示すように、① 正常造血を営めない(骨髄不全)、② 白血病の前段階と分けて理解すると分かりやすいと思います。

  • ① 骨髄不全
    • 1) 白血球減少; 感染症を起こし易くなります。特に好中球数 500/μl以下では、非常に抵抗力(免疫力)が低下しており、真菌(カビのことです)や口腔内・腸内の細菌によっても発熱を生じてくることになります。
    • 2) 赤血球減少; いわゆる貧血のことです。ゆっくりと進行してくるため、自覚症状には乏しい場合が多いのですが、ヘモグロビン(Hb)値 7.0g/dl以下となると、倦怠感・立ちくらみ等が生じてくることになります。
    • 3) 血小板減少; 出血を起こしやすくなります。血小板数 5.0万/μl以下では、抜歯や手術を行うと止血困難となり、血小板数 1.0~2.0万/μl以下では、皮下出血や歯肉出血、鼻出血といったことを自覚することも多くなります。
  • ② 前白血病段階
    • MDSの場合に全て白血病になるという訳ではありませんが、造血幹細胞の遺伝子が不安定なため、異常遺伝子が形成されるようになると、幼若な細胞の増加が止まらなくなることがあります。ある一定の量以上(骨髄もしくは末梢血において20%以上)に幼若な細胞が増えてきた場合が、急性白血病と呼ばれる状態になります。
  • ③ その他
    • 非常に稀ですが、免疫異常に関連する病態を合併することもあります。

《疫学》

年間発生率は、10万人に1人。男女比は、1.5:1。60歳台以降で増加してきます。

《分類》

骨髄中の芽球(幼若な細胞)比率、環状鉄芽球(特徴的な鉄の沈着を認める幼若な赤血球系の細胞)、単球の割合などによって分類されます(表1)。従来はFAB分類のみでしたが、最近はWHO分類も使用されています。一番の相違点は、FAB分類は、芽球30%以上を白血病、20%以上をMDS(RAEB-t)としていましたが、WHO分類では、芽球 20%以上を白血病として扱うこととなった点です。


【表1】 骨髄異形成症候群(MDS)のFAB分類とWHO分類

FAB分類でのMDS 芽球比率 その他 WHO分類でのMDS
骨髄 末梢血
不応性貧血(RA) <5% <1% 環状鉄芽球<15%
A 不応性貧血(RA)
 A-1 環状鉄芽球を伴わない(RA)
 A-2 環状鉄芽球を伴う(RARS)
B 血球系の異形成を伴う不応性貧血(RCMD)
 B-1 環状鉄芽球を伴わない(RCMD)
 B-2 環状鉄芽球を伴う(RCMD-RS)
環状鉄芽球増加を伴う不応性貧血(RARS) <5% <1% 環状鉄芽球≧15%
芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB) 5~20% <5%
C 芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB)
 C-1 RAEB-1 …芽球5~9%
 C-2 RAEB-2 …芽球 10~19%
その他
 5q-症候群
 分類不能MDS (MDS-U)
芽球増加を伴う不応性貧血(RAEB-t) 20~30% ≧5% アウエル小体 急性骨髄性白血病
慢性骨髄単球性白血病(CMMoL) <20% <20% 単球<1000/μl
骨髄異形成/骨髄増殖性疾患
 慢性骨髄単球性白血病-1
 慢性骨髄単球性白血病-2
20~30% 20~30% 急性骨髄性白血病

また、末梢血中の血球減少の程度や、骨髄中の芽球の割合、染色体異常の様式から予後がわかることもあります。

《病気を疑うとき》

貧血や出血傾向、感染症が治りにくいといった症状があり、検査にて(多くの場合、2系統以上での)血球減少があった場合に疑われます。最近では、健康診断等にて無症状でも血球減少を契機に発見されることもあります。

《検査》

診断や病期判定のために必要な検査を示します。

  • ① 採血検査…
    • 血計、血清検査、好中球アルカリフォスファターゼ活性(NAP)
  • ② 骨髄穿刺検査(骨髄生検)…
    • 胸骨や腸骨より採取します。芽球の増加の有無や染色体異常の有無についての確認のためです。治療を行った場合には、治療効果判定として行うこともあります。
  • ③ 腹部超音波検査…
    • 肝臓や脾臓の腫大の有無など、他の血球減少を来たす疾患の除外のため行うことがあります。
  • ④ ヒト白血球抗原(HLA検査)…
    • 同種造血幹細胞移植を考慮する際に行います。

《予後分類》

【表2】骨髄異形成症候群(MDS)の予後判定のための国際予後判定システム(IPSS)

0 0.5 1 1.5 2
骨髄中の芽球 <5% 5~10% - 11~20% 21~30%
染色体 良好群 中間群 不良群
血球減少 0/1系統 2/3系統
  • 1) 染色体異常;
    良好: 正常核型、20q-、-Y、5q-
    中間: その他
    不良: 複雑(3個以上)、7番染色体異常
  • 2) 血球減少の定義
    好中球: 1500/μl以下
    Hb値: 10g/dl以下
    血小板数: 10万/μl以下
リスク群 点数 白血病移行率 25%白血病移行期間 生存期間中央値
低リスク群 0 19% 9.4年 5.7年
中間リスク群-1 0.5~1.0 30% 3.3年 3.5年
中間リスク群-2 1.5~2.0 33% 1.1年 1.2年
高リスク群 ≧2.5 45% 0.2年 0.4年

《治療》

※ 骨髄異形成症候群(MDS)は確実な完全治癒は、困難な病態です。理論的に完全治癒が期待できるのは同種造血幹細胞移植ですが、発症が高齢の方も多く、副作用を強く伴う同種造血幹細胞移植は実施が困難な場合が多いことも問題点の一つです。多くの場合は、「病勢をコントロールしていき、生活に問題がない状況を維持すること。」が治療目標となります。

全てにおいて確立された治療法ではありませんが、欧米では2004年より図1~3のようにリスク群別での治療指針を提案しています。日本では保険適用されていない治療法もあり、実施に当っては主治医と相談しつつ決定していくのがよいと思います。

図1 低リスク群の治療

  • *同胞間の場合は40歳未満、非血縁者間の場合は18歳未満、ただし予後不良核型及び好中球減少が著明な場合で、全身状態が良好な時は40歳未満まで拡大
  • **保険適用はない

図2 中等度リスク群の治療

  • *40歳未満:骨髄破壊的造血幹細胞移植
    41~50歳:同胞間の場合は骨髄破壊的造血幹細胞移植
    非血縁者間での場合は骨髄非破壊的造血幹細胞移植
    51~65歳:骨髄非破壊的造血幹細胞移植
  • **保険適用はない

図3 高リスク群の治療

  • *40歳未満:骨髄破壊的造血幹細胞移植
    41~50歳:同胞間の場合は骨髄破壊的造血幹細胞移植
    非血縁者間での場合は骨髄非破壊的造血幹細胞移植
    51~65歳:骨髄非破壊的造血幹細胞移植

具体的なそれぞれの治療法について、簡単に記しておきます。

  • 1) 免疫抑制療法
    • いずれも保険適用はありません。異常クローンの免疫学的排除機構を抑制することで、血液細胞の増加をもたらすという治療効果を発揮すると考えられています。白血病化の進展に対する影響については不明です。
      • a) メチルプレドニソロン(ソル・メドロール)大量療法
        • …RAに対し、約30%に有効との報告があります。(Am. J. Hematol 38: 1990, p8)
      • b) シクロスポリン(ネオーラル)
        • …RAに対し、約80%に有効との報告があります。(Br. J. Haematol. 100: 1998, p304)
      • c) 抗胸腺細胞グロブリン(ATG)(リンホグロブリン)
        • …64%に有効であったとの報告があります。(Br. J. Haematol. 99: 1997, p699)
  • 2) 蛋白同化ホルモン(酢酸メテノロン(プリモボラン))
    • 再生不良性貧血と同様に有効な例があります。保険適用外です。
  • 3) サイトカイン療法
    • 好中球を増加するG-CSF製剤や赤血球を増やすエリスロポエチン(EPO)製剤の使用で造血回復が期待できます。但し、治療効果は一過性のことが多く、好中球減少期の感染症治癒を図る目的にてG-CSF製剤を使用することが実際に使用される場合の目的となることがほとんどです。
  • 4) 分化誘導療法
    • MDSの一つの問題点と考えられている血球分化異常を促進することで造血回復を期待する治療法です。有効例の報告もありますが、有効率は高いものではありません。
  • 5) 化学療法(抗がん剤治療)
    • 早期から行うことで、白血病への移行を遅らせる効果はありません。芽球が増加してきた場合、それにより造血抑制が生じている場合に状況の改善を図ることを期待して行います。
  • 6) 同種造血幹細胞移植
    • 若い方・ドナーが得られる方で、高リスクの患者さんでは積極的に考えてもよいのではと考えられています。しかしながら、治療を行った際のリスクも高い面があり、主治医とよく話し合って検討して頂くのがよいかと思います。
  • 7) 支持療法
    • ① 感染症を起こしやすい
      • 抗生剤、抗真菌剤等を使用します。
      • 好中球減少期には、G-CSF製剤という好中球を増やす注射を行います。また、好中球減少期間が長くなる場合には、クリーンルーム管理や加熱処理した食事等の注意も必要になってきます。
    • ② 貧血
      • ヘモグロビン値 7.0g/dl以下では、赤血球輸血を行います。
    • ③ 血小板減少
      • 血小板数 2.0万/μl以下では、血小板輸血を行います。
    • ④ その他
      • 使用する抗がん剤等により様々な症状が出現することがあります。それぞれに合わせた対策(治療法)があります。
      • 腎機能の状態により、血液浄化療法が必要となる場合があります。

《日常生活の注意》

  • ① 入院中
    • 治療経過に伴い、状況が変わります。特に白血球/血小板減少期には、感染に対しての管理が変わりますので主治医・担当看護師にご確認下さい。
  • ② 外来通院中
    • [食事]
      普通食で問題ありません。但し、外来にて化学療法を施行している患者さんで、白血球減少期にあたる時期は寿司・刺身などの生物は控えたほうがよいでしょう。
    • [運動]
      無理のない範囲で、運動して頂いてかまいません。しかし、骨病変がひどかった方は、運動内容については、主治医と相談して決めて下さい。治療により骨髄腫病変は消失していても、骨が強くなるまでは時間がかかるからです。この時期には、転倒や打撲、重いものを持ち上げる等の行為には骨折の危険があるものと考えて頂いてもかまいません。
    • [仕事]
      病期の状態により異なります。無理はしないというのが基本になります。疼痛がひどくなる、浮腫みがでる(腎臓が悪くなる)、発熱や帯状疱疹(感染症の発症)が生じたなどの場合には主治医にご相談下さい。