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診療科紹介

Medical Info

精索静脈瘤

精索静脈瘤について

精索静脈瘤とは?

精索静脈瘤は精巣から心臓にもどる「つる状静脈叢」の拡張で、一般男性の10-15%に認められるとされています 。精索静脈瘤は精巣内の造精機能(精子を作る力)に影響を及ぼすため男性が原因の不妊症の代表的なものの一つになっています。

精索静脈瘤の原因は?

精索静脈瘤はその解剖的な理由から、左側に多く発生するといわれています。逆流により精巣静脈の血液がよどむと、マフラーの様に精巣に巻き付き、精巣の温度を上昇させ、酸化ストレスの増加、カテコラミン等のホルモンの濃縮が起こり、精巣が精子を作る機能を弱めるという説が有力です。また、片方の静脈瘤でも、両側の精巣の温度が上昇し、両側性に障害をきたすとされています。

精索静脈瘤はどのような時に治療するのか?

欧米のガイドラインでは精液所見が正常の場合や、腹圧をかけても逆流を認めない静脈瘤は治療してもメリットがないとされています。ただ、二人目不妊(子供が1人おられる)の方の約70%に精索静脈瘤を認めるとの報告が多く、意見が分かれる所です。静脈瘤の診断は通常、超音波検査で診断しますが、一般的には難しく、1年以上妊娠しない場合や、慢性的な陰嚢部痛がある場合は精索静脈瘤を放置しても自然に治ることはありませんので、一度受診を強くお勧めします。

どのような治療法があるのか?

現在本邦で行われている治療は大きく分けて下記の4種類あります。
それぞれ一長一短ありますが、当院では低位結紮術を推奨しています。
(腹腔鏡下手術や、静脈塞栓術は再発の可能性が高いです。)

高位結紮術へそ脇あたりの腹部の切開で腎臓に近いほうの精巣静脈を縛る方法。
低位結紮術そけい部(足の付け根のあたり)の小切開で精巣に近い方の静脈を結紮する方法。
腹腔鏡下手術腹腔鏡を使っておなかの中の精巣静脈を縛る方法。
静脈塞栓術放射線科で精巣静脈に塞栓物質(血管の中にイルなどを)を詰める方法。

実際の精索静脈瘤の手術法は?

日帰り局所麻酔手術を基本にしています。(ご希望があれば1泊2日入院も可能です)
皮膚に痛み止めの軟膏を塗ってから感覚も鈍くし局所麻酔薬を注射します。手術中の痛みはなくなりますが、睾丸が引っ張られるような違和感があります。皮膚切開の場所は3.0㎝程なので、手術後に傷は陰毛に隠れて目立たなくなります。

手術では当院の脳外科用の手術用顕微鏡にてマイクロ手術を行います。
切開創から精索を持ち上げて、これを顕微鏡下で細かい静脈を拡大し結紮し、超音波ドップラー血流計を使用して動脈を確認し温存します。
手術時間は1時間半から2時間ほどです
顕微鏡下精索静脈瘤手術を十分に経験した泌尿器科医は日本全国でも非常に少なく手術時間が短く雑に手術する施設が蔓延していますが、術後再発や合併症のリスクが高く注意が必要です。

精索静脈瘤手術の術後は?

傷は溶ける糸で表面を縫いますので、外来での抜糸は必要ありません。肉体労働でなければ手術翌日から仕事が可能となります。7日後からは運動、飲酒、入浴が可能です。(シャワーは術当日から可)。

手術のリスクは?

一般的に、陰嚢水腫1%、再発が1%前後です。
(腹腔鏡下手術などは再発率、合併症率が高くなるため当院では推奨しておりません)

治療効果は?

精索静脈瘤手術により70-80%の方が精液所見の改善を認めると多数報告されています。通常、手術3ヶ月で改善の傾向を認め、6ヶ月では明らかに精子濃度や運動率が改善します。そのため、術前の精子レベルにはよりますが、術後3か月以降での顕微授精や体外受精では妊娠率が上昇するとされています。