医療法人 原三信病院
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膀胱がん

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概要

膀胱がんは、ほとんどが尿路上皮細胞から発生します。発生原因は多くは不明であるものの、喫煙、特定の化学物質への曝露、慢性的な膀胱炎などが膀胱がんの発生リスクを増加させる可能性が指摘されています。早期段階では、症状があまりなく、進行すると血尿、排尿時の異常などの症状が現れることがあります。

原因・症状

膀胱がんの主な原因はまだはっきりとはわかっていませんが、以下の要因が関与していることがあります。
■喫煙:喫煙は腎がんのリスクを増加させる要因とされています。
■化学物質への曝露:
長期間にわたって特定の化学物質に曝露されることも、膀胱がんのリスクを高める可能性があります。例えば、染料、ゴム、革、石炭などの産業労働者はリスクが高いとされています。
■慢性的な膀胱炎:
長期間にわたる慢性的な膀胱炎は、膀胱がんの発生リスクを増加させる可能性があります。

膀胱がんについて、以下の症状が現れることがあります。
■血尿(尿が赤くなる):
最も一般的な症状であり、膀胱がんの早期段階から現れることがあります。
■排尿時の痛みや刺激感:
膀胱がんが進行したり悪性度の高い膀胱がんにかかったりすると、排尿時に痛みや刺激感を感じることがあります。
■頻尿や尿量の減少:
膀胱がんが膀胱の内部を占拠すると、膀胱の容量が減少し、頻尿や尿量の減少が生じることがあります。
■膀胱感染症の症状:
膀胱がんが感染を引き起こすことがあり、尿の異臭や尿路感染症
の症状が現れることがあります。

検査

■尿検査:尿中に赤血球がどの程度混じっているのかやがん細胞があるのかどうか(「尿細胞診検査」と言います)を調べます。尿路上皮がんに特有な核内の物質を調べることもあります。
■血液検査:一般的に、腎機能、炎症の程度、貧血の有無などが調べられます。
■膀胱内視鏡検査(膀胱鏡検査):膀胱内に細い管内視鏡を挿入して、膀胱の内部を観察し、異常な隆起や粘膜のただれ、どの部位から出血しているのかなどを確認します。
■超音波検査:形状や腫瘤の有無を確認するために超音波検査が行われます。非侵襲的に膀胱の壁に腫瘤がないかどうかや周囲組織の画像を描出します。ただし、膀胱内に尿がしっかりたまっていなければ判定が困難なこともあり、膀胱鏡検査で腫瘍の確認は必要です。
■CT(コンピュータ断層撮影):CTスキャンは、詳細な断層画像を描出し、膀胱や周囲の組織の異常を検出するために使用されます。必要に応じて、造影剤を使用することもあります。ただし、腫瘍と膀胱の壁との関係性を描出するのには難があり、また、被ばくをともないます。
■MRI(核磁気共鳴画像法):CTと同様に、腎臓や周囲の組織の異常を描出するのに役立ちます。CTと比べ腫瘍と膀胱の壁との関係性を描出するのに優れ、被ばくの影響はありません。ただし、描出可能な範囲がCTに比べ狭く膀胱から遠い臓器の検査はできず、体内にペースメーカーなどの金属が入っている方や閉所恐怖症の方の検査はできません。

治療

■まずは麻酔下に尿道から内視鏡を挿入し、膀胱内の腫瘍を切除します。これにより、腫瘍の種類や深さを診断します。9割以上が膀胱のごく表面の「尿路上皮細胞」ががん化したものと言われています。
この手術を経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)と言います。膀胱の表面にとどまっている多くの腫瘍はこのTURBTで治療も兼ねることになります。ただ、5年で6割、10年で8割の再発があるといわれ、TURBT後にどれくらいの間隔で外来での評価を行うか、膀胱内に再発予防のお薬を入れるかどうかやその期間や回数などを検討します。

■膀胱がんが奥深い層、つまり、ごく表面の直下にある筋肉の層まで達していた場合、全身へ転移するリスクが高まります。一般には、CTや骨の転移の有無を調べて、膀胱内にがんがとどまっている場合は、膀胱を全部取る手術(膀胱全摘除術)が選択されます。膀胱全摘除術のみを行っても、5年生存率は約5割程度と非常に厳しい予後をたどることが知られており、全摘術を行う場合は前もって、抗がん剤を投与することで5年生存率が15%ほど改善することが知られており、当院でも術前に数か月程度の抗がん剤を投与したうえで手術を行います。膀胱全摘除術の場合、膀胱の代わりに腸管を使った尿路を作り体外へと排出させる回腸導管や、やはり腸管を用いて膀胱の代わりとなる尿をためる袋を作ったりする代用膀胱などの尿路変更術が同時に行われます。各々メリットとデメリットがあり、主治医とよく相談の上方針を決定します。
筋層に尿路上皮がんが達した場合も、ご希望や全身状態などを考慮し、手術ではなく膀胱に放射線を照射する治療も行われています。まだ有効性に関し十分な証拠に乏しく、年齢が比較的若い方で放射線治療を希望される場合は、症例経験の豊富な一部の大学病院へ紹介も行います。

■すでに転移がある状態や膀胱周囲のがんの浸潤の程度によっては、抗がん剤や免疫に作用する薬を用いて治療を行い、その結果を見てその後の治療を検討する場合もあります。本人や家族の希望や全身状態などを考慮して、頻尿や血尿などのコントロールを行いながら痛みなどがあれば取り除く緩和治療を行う方もいます。