医療法人 原三信病院
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前立腺肥大症

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概要

男性にのみ存在する生殖器のひとつである前立腺が、正常な大きさを超えて肥大する疾患です。一般的な成人男性での前立腺の大きさは、よく「クルミぐらいの大きさ」と例えられますが、肥大するとクルミぐらいの大きさのものが鶏の卵以上の大きさになります。また、前立腺は尿道の周囲に位置しているため、肥大により尿道を圧迫が圧迫され、排尿障害を引き起こすことがあります。

原因・症状

前立腺肥大の原因は完全にはわかっていませんが、男性ホルモンのはたらきが関与しており、加齢によってホルモンバランスが変化することにより前立腺が肥大すると考えられています。年代別の患者数は50代頃から増加し、60歳では約半数の男性に前立腺肥大が見られます。加齢の他には、遺伝的要因、食生活、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常などもリスク要因であると考えられています。前立腺肥大症は排尿障害を引き起こすため、以下のような症状がみられます。

■頻尿・夜間頻尿
■尿の出が悪い(すぐに出ない、時間がかかる)
■残尿感
■尿の勢いの低下
■尿をする時に力む

検査

■自覚症状の評価:排尿に関する7つの質問に対して6段階で評価し、重症度の判定に使用します。
■直腸内指診:肛門から直腸に指を入れて前立腺に触れることで、前立腺の形や硬さ、痛みの有無を調べます。
■尿検査:血尿の有無、尿路感染症の有無などを確認します。
■尿流測定:尿の勢い(1秒間にどれぐらいの尿量が排出されるか)、排尿量、排尿時間などを数値化し、排尿障害の有無や程度を調べます。
■残尿量測定:排尿後、膀胱にどれくらいの量の尿が残っているかを調べます。      
■血液検査:血液中のPSA濃度を測定します。PSAは前立腺から分泌される特異なタンパクで、前立腺がんや前立腺肥大症などで値が上昇します。
■エコー検査:前立腺の大きさがわかります。直腸内指診よりも正確に前立腺の大きさを知ることができます。

治療

前立腺肥大症の治療には薬物療法と手術療法があり、前立腺の大きさや症状の程度によって治療法が選択されます。

手術療法

手術は、薬物療法の効果が不十分である時や、中等症~重症の患者さんに対して選択されます。
手術は、主に肥大した前立腺を①削る②核出する(くり抜く)③蒸散させるの3つの方法があります。

  • 経尿道的前立腺切除術(TURP):尿道から内視鏡を挿入し、電気メスで肥大した前立腺の内側(内腺)を少しずつ削り取ります。
  • 経尿道的前立腺核出術(HoLEP・TUEB)尿道から内視鏡を挿入し、前立腺の内側と外側(内腺と外腺)  の境目を剥がして肥大した内腺を丸ごとくり抜きます。くり抜くための道具がレーザーの場合はHoLEP、電気メスの場合はTUEBと呼ばれます。くり抜いた内線は細かく切断しながら吸引し、体外に取り出します。内腺を少しずつ削るTURPと比較して出血量が抑えられます。また、内腺を丸ごとくり抜くことで取り残しがほぼないため、再発も少ないです。
  • 経尿道的前立腺レーザー蒸散術(PVP・CVP):内視鏡を用いて尿道から光ファイバーを通し、レーザーを前立腺に照射することで前立腺組織を蒸散(組織を一瞬で蒸発させ、気体にする)させる方法です。酸化ヘモグロビンに吸収されやすい性質を持つレーザーを使用する手術法はPVP、酸化ヘモングロビンに加え水にも吸収されやすい性質をもつレーザーを使用する手術法はCVPと呼ばれます。どちらも組織の蒸散にともない表面に凝固層が形成され、出血のリスクが非常に低いため、抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)の服用を継続した状態でも手術ができます。また、入院期間も短く、身体への負担が小さいことも特徴です。
  • 水蒸気注入治療(WAVE):内視鏡を用いて尿道から前立腺に針を刺して針先から前立腺内部に水蒸気を注入します。70度に熱せられた組織が壊死して自然吸収されるため前立腺部尿道が広がります。出血などの合併症が少ない低侵襲治療で、手術時間も10わかからず短時間で実施可能な術式です。ただし効果発現までに即効性がなく、治療効果が現れるまでに手術後1-2ヶ月間を要します。

薬物療法

前立腺肥大症に対して使用される薬にはいくつか種類があり、効果が違うため症状に適したものが選択されます。
代表的には以下のようなものがあります。

  • α遮断薬:前立腺や尿道の筋肉の緊張を緩め、尿道の圧迫を軽減させ尿を出しやすくします。
  • α還元抗阻害薬:血液中の男性ホルモン(テストステロン)の前立腺に対する作用を抑えて前立腺を小さくし、尿道の圧迫を軽減させ尿を出しやすくします。
  • 抗男性ホルモン薬:精巣からの男性ホルモン(テストステロン)の分泌、前立腺へのテストステロンの取り込みなどを抑えて前立腺を小さくし、尿道の圧迫を軽減させ尿を出しやすくします。
  • PDE5阻害薬:前立腺など筋肉を緩める物質を分解する作用のあるPDE5のはたらきを抑えることで前立腺などの緊張を緩め、尿道の圧迫を軽減させ尿を出しやすくします。
  • 漢方薬:前立腺の炎症を抑え排尿障害の症状軽減を促します。入院期間は約数日~10日間です(術式により異なります)。