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悪性リンパ腫・総論

悪性リンパ腫・総論

《どんな病気》

悪性リンパ腫は、血液細胞である白血球の中のひとつで、人間のからだを感染症などから守る免疫という機能を司るリンパ球という細胞が「がん化」して異常に増殖することで起こる腫瘍性疾患です。悪性リンパ腫では「がん化」したリンパ球が主に全身のリンパ節で増殖するため、首や脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れてくる「リンパ節腫大」として気づかれることが多い疾患です。しかし悪性リンパ腫はときに、リンパ節腫大を伴わず、胃や十二指腸などの消化管や、精巣、脳などの臓器から発症することもあります。

リンパ図

《症状》

多くの場合は、首や脇の下、足の付け根などのリンパ節が腫れてくる「リンパ節腫大」として気づかれることが多いのですが、胸部や腹部リンパ節など表面から触れることができないところから発症した場合には、健診などで偶然に発見されることもあります。またリンパ節以外で発症する場合、胃や十二指腸などの消化管由来の場合は腹痛や胸焼け、精巣の場合は睾丸腫大で、脳悪性リンパ腫の場合は麻痺症状などの神経症状で発症する場合があります。また体重減少や発熱、皮疹などを伴うこともあります。また胸水や腹水を伴う場合もあります。病変が増大して病状が進行する速さは、組織型によって異なり、低悪性度リンパ腫は年単位、中悪性度リンパ腫は月単位、高悪性度リンパ腫は週単位で病状が進行すると言われています。

《疫学》

日本で1年間に発生する悪性リンパ腫は約1万人で、少しずつ増えています。ちなみに欧米人は、人口当たりの悪性リンパ腫の発生率はおおむね日本人の2倍くらいです。

《分類(組織型)》

悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)は大きくはB細胞性とT細胞性に分類されます。切り取った病変を顕微鏡で調べた結果による「組織型」が治療方針の決定には重要です。最近はWHO分類が用いられていますが、これらの分類は腫瘍の増殖のスピードや,抗癌剤への反応性を反映しているのです

~ 2001年WHO分類 ~

I. B細胞腫瘍 B-cell neoplasms
  1.前駆B細胞腫瘍 Precursor B-cell neoplasm
・前駆B リンパ芽球型白血病/リンパ腫 
  2.成熟B 細胞腫瘍 
・B 細胞慢性リンパ性白血病
・小リンパ球性リンパ腫 
・B 細胞前リンパ球性白血病 
・リンパ形質細胞性リンパ腫 
・ 脾辺縁帯リンパ腫 (+/?絨網細胞) 
・有毛細胞白血病 
・節外性粘膜関連リンパ組織型辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT リンパ腫) 
・ 節性辺縁帯B細胞リンパ腫 
・濾胞性リンパ腫 (grad 1,II,III) 
・マントル細胞リンパ腫 
・びまん性大細胞型B細胞リン
・ 前縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫 
・血管内大細胞型B細胞リンパ腫 
・原発性体腔性リンパ腫 
・Burkitt リンパ腫/白血病 
II. T/NK細胞腫瘍 
          
リンパタイプ別

《病気を疑うとき》

採血検査にてLDHや可溶性IL-2受容体の増加などの異常を呈することはありますが、悪性リンパ腫に特徴的な検査所見は乏しく、確定診断のためには、腫大しているリンパ節などの病変部を切り取って顕微鏡で調べる「生検検査」が必須です。頚部などのリンパ節が腫れている場合には、局所麻酔で生検を行うことが可能ですが、腹部などの場合は全身麻酔下での手術で生検を行う場合があります。また精巣原発の場合には睾丸摘出、胃や十二指腸などの消化管に病変がある場合には内視鏡下での生検が選択される場合もあります。脳原発の場合には髄液検査などを行う場合があります。生検で得られた病変を顕微鏡で調べる病理検査で、悪性リンパ腫という診断が確定すれば、次には詳しい免疫染色検査なので「組織型」を特定する必要があります。

《検査》

診断のために必要な検査と、悪性リンパ腫の広がりを調べるための「病期診断」のために必要な検査に分類されます。またその他治療に耐えうる臓器能を有するかを評価するための、心機能、腎機能、肝機能などを検査する場合があります。

<Ⅰ> 診断に必要な検査

  1. 生検検査 確定診断のために必須の検査です。治療ではなく診断のために、腫大しているリンパ節の中の一部を手術的に摘出し、顕微鏡で詳しく調べます(病理検査)。中間報告までに約1週間~10日間、最終診断までは約1ヶ月を要する場合があります。リンパ節以外の部位から発症している場合も、同様に生検を行い、病理検査にて診断を行うプロセスは同様です。
  2. 細胞診検査 胸水や腹水が貯まっており、これが悪性リンパ腫に由来するものか否かを調べる場合など、あるいは脳の悪性リンパ腫などの場合の髄液などを採取して、含まれている細胞を調べる検査です。

<Ⅱ> 病期診断に必要な検査

  1. FDG-PET検査: 悪性リンパ腫の細胞が正常な体細胞に比べて、ブドウ糖を取り込みやすい性質を利用して、ブドウ糖に似た物質(FDG)に印をつけて体内に投与し、FDGを多く取り込んでいる部位を特定できる方法で全身を撮影する検査です。悪性リンパ腫の病変が隠れている部位を感度よく発見できる利点がありますが、当院にはこの検査がないため、外来受診にて和白病院または福岡記念病院に受診しての検査が必要です。
  2. CT検査: 頚~胸部、上腹~骨盤部の2回に分けてのCT検査で、腫大しているリンパ節などの大きさや広がりを評価します。必要に応じて造影剤を注射して行う造影CT検査を行う場合があります。
  3. 消化管検査: 胃カメラ、大腸カメラ(大腸透視)、場合によっては九州大学病院に依頼して小腸カメラ(3-5日程度の検査入院が必要です)を行う場合があります。
  4. 骨髄検査: 悪性リンパ腫の細胞が血液細胞を作っている場である骨髄に入り込んでいないかを検査します。所要時間は10-15分程度ですが、局所麻酔注射と骨髄細胞を採取するための数秒間が痛い検査です。

《病期分類》

リンパ転移図

《治療》

これから述べるのは悪性リンパ腫の治療についての一般的なお話で、厳密には「組織型」の違いなどによって患者様ごとにことなります。
悪性リンパ腫の治療は、抗癌剤治療、放射線治療、モノクローナル抗体療法、造血幹細胞移植などの中から、疾患の状態などによって複数を組み合わせて行うのが一般的です。推奨されるべき治療方針は、特に「組織型」や病期などの予後因子によって異なります。しかし多くの悪性リンパ腫の患者さんでは、初期治療としてはCHOP療法と言われる抗癌剤が選択されることが多い現状です。CHOP療法などの初期治療は2回ほど行った後に効果判定を行い,継続すべきか別の治療方針に変更するかを検討するのが一般的です.他に悪性リンパ腫の細胞が、病理検査結果で「CD20」と言われる蛋白質を持っている場合には、モノクローナル抗体療法であるリツキシマブ療法が有効な場合があります。リツキシマブはCHOP療法などの抗癌剤と併用することが多い薬剤です.それ以外にも組織型によってはHyper CVADやフルダラビン療法などが選択される場合があり、また初期治療に反応が悪かった場合は再発時などには、救援化学療法がお行われる場合があります。目標については、抗癌剤治療で完全治癒の可能性がある組織型もあれば、抗癌剤治療では根治が期待できない組織型まで様々あり、組織型によって治療目標は異なります。抗癌剤治療では根治が期待できない場合の抗癌剤治療の目標は、「病勢をコントロールしていき、生活に問題がない状況を維持すること。」になります。

治療

自己末梢血幹細胞移植や同種造血幹細胞移植(同種骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、同種臍帯血移植)などの造血幹細胞移植が、治療成績と予後を改善させたり、完全治癒の可能性をもたらす可能性がありますが、ときに治療関連死亡もありえる造血幹細胞移植の適応や推奨される程度は、組織型によって異なります。また年齢や全身状態によっては、副作用の強い造血幹細胞移植は選択できない場合もあります。
また抗癌剤治療や造血幹細胞移植以外にも、補助的に放射線治療が選択される場合もあります。また脳悪性リンパ腫の場合や、精巣原発の悪性リンパ腫のように脳再発が多いと予想される場合には、抗癌剤を髄腔内に投与する治療(髄注療法)を併用する場合があります。

  1. 抗癌剤治療: 悪性リンパ腫は診断時より全身疾患であり、外科的治療や放射線治療は補助的治療であり、治療の第一選択は基本的に抗癌剤治療になります。CHOP療法と言われる抗癌剤治療が選択される場合が多いですが、組織型や予後因子などによって推奨される治療内容は異なり、またCHOP療法が選択される場合でも、リツキシマブ療法を併用したり、自己末梢血幹細胞移植を併用した方が良いと考えられる場合がありますので、詳細は主治医におたずね下さい。
    1. CHOP療法: 多くの悪性リンパ腫において標準治療と考えられています。3種類の抗癌剤とホルモン剤を組み合わせた治療です。1日の点滴抗癌剤治療と5日間の副腎皮質ホルモンの投与で成り立ち、これを原則としては3週間後とに6~8回行います。主な副作用は嘔気や倦怠、脱毛の他、白血球減少(好中球減少)、末梢神経障害による手足のしびれと便秘、副腎皮質ホルモンによる不眠や高血糖です。初回治療は悪性リンパ腫の腫瘍量が多い状態から治療を開始する場合には、腫瘍が抗癌剤で一気に壊れることで、高カリウム血症や腎障害などを引き起こす腫瘍崩壊症候群を予防するため、大量に水分を点滴して尿を大量に出させることで予防することがあります。CHOP療法は状態が安定すれば2回目以降は外来化学療法を行うことが可能な場合が多いです。
      薬剤名 薬剤量 治療方法 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目
      シクロホスファミド
      (エンドキサン)
      750mg/m2 点滴
      ドキソルビシン
      (アドリアシン)
      50mg/m2 点滴
      ビンクリスチン
      (オンコビン)
      1.4mg/m2 静脈注射
      プレドニゾロン
      (プレドニン)
      100mg/bodr 内服
    2. リツキシマブ療法: 悪性リンパ腫の中には細胞の表面に「CD20」と名づけられた蛋白質を有することがあります(生検による病理検査で判明します)。このCD20を有する悪性リンパ腫の場合には(CD20陽性悪性リンパ腫)、このCD20をターゲットにした特異的なモノクローナル抗体療法が可能になります。多くの場合は、CHOP療法などの抗癌剤治療との組み合わせで使用さますが、病状によってはリツキシマブ単独療法を行う場合もあります。初回投与時にはアレルギー症状やアナフィラキしー症状、腫瘍崩壊による症状などを引き起こす可能性があるため、入院にて行いますが、副作用が軽微な場合にはCHOP療法同様に、2回目以降は外来で投与可能になります。リツキシマブ療法は保険上8回まで使用することが可能です。リツキシマブ(商品名リツキサン)療法についても詳細は別紙説明書をご参照下さい。
    3. 救援化学療法: CHOP療法などの初期治療が効かない場合や、再発時などに救援的に行う抗癌剤治療です。急変化学療法は一定の効果が得られても一過性のことが多く、病勢を一時的であれ抑え、症状を緩和する事が治療目標になることが多いです。ESHAP療法、EPOCH療法、CHASE療法、クラドリビン療法、AraC中等および大量療法などがありますが、詳細は主治医におたずね下さい。
  2. 放射線療法: 病期がIおよびIIの場合には、あらかじめCHOP療法を3回で終了して放射線照射を行うことがあります。また精巣原発の悪性リンパ腫の場合には、抗癌剤治療に加えて、対側精巣を含んだ睾丸と骨盤内に放射線治療を行う場合があります。それ以外には診断時に大型の病変を有していた場合に、抗癌剤治療に加えて、その大型の病変部に放射線治療を行う場合があります。また再発、難治性の場合に症状緩和的に、また脳悪性リンパ腫に対して放射線治療をする場合があります。
  3. 造血幹細胞移植
    1. 自己末梢血幹細胞移植: 自己末梢血幹細胞移植(APBSCT)は、悪性リンパ腫などの造血期悪性腫瘍に対する予後を改善するために1980年代から開発された治療法のひとつです。自分の血液の大元の細胞である「造血幹細胞」を末梢血から採取して保存しておき、骨髄の造血能が破壊されるほどの超大量の抗癌剤投与を行うことで悪性リンパ腫に対する治療強度を増大させる治療法で、合併症や副作用の程度も通常化学療法に比べて強い一方で、予後が改善される可能性がある治療です。「組織型」や年齢によって適応が異なりますので、詳細は主治医におたずね下さい。
    2. 同種造血幹細胞移植: 同種造血幹細胞移植(以下略して同種移植)は、造血幹細胞をどこから採取するかによって、骨髄移植、同種末梢血幹細胞移植、同種臍帯血移植に分けられます。同種移植は、他人(ドナー)から造血幹細胞の提供を受けて行うのが、自家移植(自己末梢血幹細胞移植)との相違点です。同種移植では、他人の造血幹細胞由来のリンパ球が患者様の臓器を「他人」と認識して攻撃する移植片対宿主病(GVHD)という病態が起こるなど、APBSCT以上に合併症の強い治療であることから、再発・難治性の濾胞性リンパ腫や、予後不良なマントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫などが同種移植の適応と考えられていますが、明確な適応はまだ確立していない現状です。年齢や組織型など個々の患者様ごとに検討していくことになります。
  4. 抗癌剤の髄注療法: 脳や脊髄の周り(脳脊髄腔)には無色透明な液体が流れており、これを髄液と言います。点滴や内服で投与する抗癌剤は、「脳血液関門」と呼ばれる脳を種々の外来薬物から守るための康造によって、脳および脳脊髄腔に届きにくいという特徴があります。このため悪性リンパ腫の中枢神経再発予防や、実際に脳内に悪性リンパ腫病変がある場合には、直接脳脊髄腔に抗癌剤を注入することがあります。これを抗癌剤の髄注療法といいます。下の図のように体を丸めて横向きに寝てもらい、腰から細い針を刺して治療を行います。この際には採取した脳脊髄液の形状を観察したり検査を行ったりすることもできます。治療後には頭痛やしびれ、稀に麻痺などが生じることがありますが、多くは一過性です。頻回に抗癌剤の髄注療法を行うと、白質脳症という脳の障害が出現して、認知力の低下など障害が残ることがあります。
  5. 体勢
  6. 支持療法
    1. 感染症を起こしやすい
      ・抗生剤、抗真菌剤等を使用します。
      ・好中球減少期には、G-CSF製剤という好中球を増やす注射を行います。また、好中球減少期間が長くなる場合には、クリーンルーム管理や加熱処理した食事等の注意も必要になってきます。
    2. 貧血
      ・ヘモグロビン値 7.0g/dl以下では、赤血球輸血を行います。
    3. 血小板減少
      ・血小板数 2.0万/μl以下では、血小板輸血を行います。
    4. その他
      ・使用する抗がん剤等により様々な症状が出現することがあります。それぞれに合わせた対策(治療法)があります。・腎機能の状態により、血液浄化療法が必要となる場合があります。

《日常生活の注意》

  1. 入院中 治療経過に伴い、状況が変わります。特に白血球/血小板減少期には、感染に対しての管理が変わりますので主治医・担当看護師にご確認下さい。
  2. 外来通院中 [食事] 普通食で問題ありません。但し、外来にて化学療法を施行している患者さんで、白血球減少期にあたる時期は寿司・刺身などの生物は控えたほうがよいでしょう。 [運動] 無理のない範囲で、運動して頂いてかまいません。 [仕事] 疾患の状態により異なります。無理はしないというのが基本になりますが、外来化学療法を行う場合でも、嘔気や倦怠などの自覚症状が比較的経度の場合には、仕事をしながら治療することも可能な場合があります。発熱や帯状疱疹(感染症の発症)が生じたなどの場合には主治医にご相談下さい。
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