当院の機器について
ロボット支援手術装置 ダヴィンチ(da Vinci)
手術支援ロボット「ダヴィンチ」は、従来の開腹・開胸手術より患者さんの負担の少ない低侵襲手術として発展してきた鏡視下手術(腹腔鏡下・胸腔鏡下手術)の特徴に、ロボット機能を搭載することによって技術や操作性を格段に向上させ、繊細で正確な手術を行うことが可能となった最新鋭の手術支援装置です。
当院では、2016年4月よりダヴィンチによる「前立腺がん」手術治療開始を皮切りに、「腎臓がん」「膀胱がん」「尿管がん」「腎盂がん」に対してもダヴィンチによる侵襲の低い安全な手術を行えるようになりました。
また、泌尿器領域のがんのみならず、消化管領域のがん「大腸がん」が2022年4月よりロボット支援手術の保険適用に拡大され、当院外科は慎重な準備を経て、同年9月よりロボット支援大腸手術を開始しました。
ダヴィンチ手術は、患者さんの手術による負担を軽減し、機能温存の向上を期待できる手術ですが、患者さんのがんの進行状態や併存疾患、健康状態によりその適応は決定されます。
(ダヴィンチ手術を適応するには、いくつかの条件があります)
ダヴィンチ(da Vinci)とは
サージョンコンソール
執刀医が「サージョンコンソール」と呼ばれる操縦席に座りハイビジョン3D画像を見ながら、手元のコントローラーを操作します。執刀医がカメラ操作を行うため適切な手術部位を映し出すことが可能です。
残りの3本の鉗子(360°以上回転する自在な鉗子)も執刀医が操作し、多彩な動きを実現しています。
執刀医による手の震え(手振れ)に対しても自動的に「補正機能」が手術器具に伝達されて、今までの腹腔鏡手術や開腹手術などでは不可能であった、繊細かつ正確な手術操作が可能になっています。
ビジョンカート
ペイシェントカートの3Dカメラから送信される鮮明なハイビジョン3D画像を作成し執刀医に提供します。
モニタには手術中の画像(任意で拡大ズームが可能)が映し出され、手術スタッフも画像を共有することができます。
ペイシェントカート
ペイシェントカート本体には3本の鉗子アームと1本の内視鏡カメラのアームが装着されています。
コントローラーからの指示で、医師の手の動きを正確かつ繊細に再現して、アーム本体や先端にある鉗子を操作して手術を行う。
そのような過程でペイシェントカートは患者さんに接する機器となります。
ダヴィンチ(da Vinci)の特徴
- 患者さんの負担が少ない
鉗子を挿入する小さな切開部から手術を行うので、傷口が小さく、出血も抑えられることから術後の回復が、通常の開腹手術などと比べて患者さんの負担が軽減されます。 - 鮮明な3D(3次元)画像
コンソールモニターには高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像が映し出されます。 - 精密な動きを再現
医師がロボットアームに装着されている鉗子やメスを操作します。ダヴィンチの鉗子はリスト構造を持ち、人間の手より大きな可動域と手ぶれ補正機能を備えています。
患者さんのメリット
- 手術創(傷口)が小さい
鉗子を挿入する10mm程度の皮膚切開が数カ所 - 出血量が少ない
開腹手術等と比較しても極めて出血が少ない - 術後合併症の軽減
術後感染症などの発生リスクが低い - 機能温存の向上
繊細な動きによって機能温存できる可能性が高い - 入院期間が短い(回復が早い)
傷口が小さいため術後回復が早い(早期社会復帰)
手術費用
前立腺がんのロボット支援手術費用の総額では、約150~170万円(食事代・差額室料代などは含まない)、公的保険が適用され患者さんのご負担が3割の場合、約45~50万円となります。
ただし、高額療養費制度を利用した場合(限度額適用認定証を提示された場合)、所得に応じてご負担額は以下2種類となります。
- 70歳未満の方:93,000円~160,000円(食事代・差額室料代などは含まない)
- 70歳以上の方:44,000円~93,000円(食事代・差額室料代などは含まない)
放射線治療装置 トモセラピー(TomoTherapy)
がん治療は、外科手術・化学療法・放射線治療の大きく3種類に分けられます。放射線治療は、手術と同様局所に対する治療ですが、手術のように臓器を取り除いたりすることなく、臓器の形状や機能を温存することができ、痛みなど副作用が少ない患者さんにとっては体の負担が軽い治療です。
レントゲン撮影と同様に、放射線治療も痛みや熱を感じることはありません。
放射線治療の目的は、がんそのものの「治癒」と苦痛などの「緩和」の2つにわかれます。放射線治療単独で行われることもありますが、外科手術や化学療法と併用されることもあります。
トモセラピー(TomoTherapy)とは
今までの放射線治療は、周りの正常な細胞にも余分な放射線が当たるため、副作用が問題になっていました。
トモセラピーは、がんの形に合わせて照射範囲を決められるので、正常細胞に対する照射を極力抑え、がんの部分だけにピンポイントで放射線を当てることが可能になりました。
トモセラピー(TomoTherapy)の特徴
IMRT(強度変調放射線治療)
IMRTは、放射線の強度を複雑に変化させながら照射することで、放射線を当てたい病巣自体には高い線量を集中的に照射し、また放射線を当てたくない周辺臓器の線量は減らすことができる治療法です。トモセラピーは、独自の機構により腫瘍の形状に合わせた原体性の高い照射が可能です。
治療台を移動させながらの連続照射が可能
病巣の大きさが大きいがんに対して、照射範囲が40cmを超えると他の治療装置ではIMRTが困難です。トモセラピーはこのような広範囲のがんに対しても、寝台を移動させることで連続的な治療が可能です。
IGRT(画像誘導放射線治療)
治療の直前に画像を撮影し、治療計画時との体のずれや臓器の動きを確認し、位置を補正する新しい治療法です。原体性の高い治療ほど、位置の正確性が重要になります。トモセラピーは、装置内に搭載されているCT機能を利用して、本格的な3DによるIGRTが可能です。
治療直前時のCT撮影が撮影可能
放射線治療は数回~数十回の照射を繰り返すため、病巣の正確な位置や大きさを把握しなければなりません。トモセラピーは、治療直前の病巣部をCT撮影することから正確な位置を把握した上で、精度の高い放射線治療を行うことが可能です。
患者さんのメリット
- 病巣への集中照射が可能
病巣自体には高い線量を集中的に照射 - 広範囲の治療が可能
寝台がスライドしながらの連続照射が可能 - 一度に数カ所の治療が可能
回転&寝台スライドすることから複数の病巣に同時に照射が可能 - 副作用の影響が少ない
病巣への集中的照射は周辺臓器への影響が少ない - 治療時間が比較的短い
CT搭載による病巣の正確な位置把握(治療計画短縮)
連続照射による無駄な時間が不要
治療費用
病名 | 外来/入院 | 治療法 | 回数 | 医療費 | 個人負担 (3割の場合) |
---|---|---|---|---|---|
乳がん | 外来 | 高精度放射線治療 | 25回 | 約95万円 | 約30万円 |
前立腺がん | 外来 | 高精度放射線治療 | 37回 | 約145万円 | 約45万円 |
肺がん | 外来 | 定位放射線治療 | 11回 | 約65万円 | 約20万円 |
肝臓がん | 外来 | 温熱療法 | 8回 | 約9万円 | 約3万円 |
臨床例
がん温熱療法 ハイパーサーミア(hyperthermia)
がん細胞を加温する治療法で、副作用がほとんどなく患者さんの負担が少なく済みます。加温による直接効果のほか、一般的ながん治療である外科手術、化学療法、放射線治療と併用することで、がん治療の効果を更に高めます。
ハイパーサーミアとは
がん組織は正常組織に比べて熱に弱いとされています。ハイパーサーミア(がん温熱療法)は、高周波エネルギーを用いて病巣を加温することにより、化学療法や放射線治療の上乗せ効果を期待して行われる治療です。がんは体の表面から深い臓器に至るまでほとんどの組織にできる病気です。温水などの普通の加温では、所定の温度(42℃以上)に高めることは不可能ですが、高周波エネルギーを巧みに利用することによって加温が可能です。また、高周波をがん組織と正常組織に同時に加えても正常組織は血管が拡張して血流が増え、放熱しやすいが、がん組織はほとんど血管の拡張が無く、血流が少ないため、蓄熱しやすく、正常組織に比べ高い温度が保てます。
この特性に着目し、研究を重ねた末、生まれた治療法が高周波ハイパーサーミア(がん温熱療法)です。
ハイパーサーミアの特徴
- 抗がん薬の増感効果
加温することでがん細胞を覆う細胞膜の透過性が高まり、抗がん剤の取り込み量が増えます。がん細胞内の抗がん剤の濃度が高まり、効果が増強されます。 - 放射線の感受性の増感効果
放射線抵抗性の傾向のあるがん細胞は、加温によって放射線感受性が高まる可能性があります。
併用療法のメリット
- 外科手術
手術によってがんを小さくせてから手術を施行する。加温にて腫瘍を縮小させることが可能。 - 化学療法
加温によりがん細胞内に薬剤が取り込まれ易くなる。がん細胞の抗がん剤感受性を増感させる。 - 放射線治療
がん細胞の放射線感受性を増感させる働きがある。放射線効果と温熱効果で補い合うことが可能。
温熱療法の適応外となる方
- ペースメーカーを入れている方
- 肥満や皮下脂肪が厚い体型の方
- 治療は背臥位・腹臥位・座位のいずれかで行い、この姿勢を60分保持できない方
- 小児または妊婦である方
- 体内に金属がある方(金属ステントの留置など)
- 刺青を入れている方
- その他主治医が不適と判断した方
- PS※が2以上の方
※ PS(パフォーマンスステータス)とは、全身状態の指標の一つで、患者さんの日常生活の制限を示します。
PS(パフォーマンスステータス)
0:まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1:肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業
2:歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3:限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4:まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。
治療費用
温熱療法は保険診療です。
3ヶ月を1クールとし、同一部位に3クールまで継続して治療を行うことが可能です。
- 化学療法と併用する場合
治療日と近接した日時に温熱療法を行います。1クール8回前後の温熱療法を受けることが可能です。 - 放射線治療と併用する場合
治療日は担当医が決定します。週に1~2回とするのが一般的です。
1クールの料金は、
- 深在性悪性腫瘍の場合、90,000円(3割負担の方で27,000円)
- 浅在性悪性腫瘍の場合、60,000円(3割負担の方で18,000円)
1クールの料金ですので、支払いはクールの初回のみで、2回目以降は再診料だけとなります。
全身用X線CT診断装置(320列CT/80列CT/16列CT)
CT検査はX線を使って身体の断面を撮影する放射線の検査です。
CT(Computed Tomography)を略したもので「コンピュータ断層撮影」と言い、身体の周りからX線をあて、体を通過したX線情報をコンピュータで解析し、連続した断層画像(輪切りの画像)を得る検査になります。
連続した断層画像を薄くすることで、いろいろな方向(横断面・冠状面・矢状面)や3D画像(立体的な写真)をつくることも可能です。
320列CTは、従来の80列CTと比べ、撮影時間も短く、4倍の広範囲での撮影が可能です。
(40mmの範囲→160mmの範囲)
320列CTの特徴
- 広範囲撮影
0.5mm幅の320列により16cmの範囲を0.35秒で撮影可能で、心臓や脳全体では一度で撮影できます(常に動いている心臓の場合でも、高速撮影することによって、画像のひずみが抑えることが可能です)。 - 撮影時間の短縮
撮影時間が短縮できるため造影剤の使用量を低減できます。 - 放射線被ばくの低減
従来の64列/80列マルチスライスCTに比べ、概ね1/4程度に被ばく低減が可能です。 - 機能的診断
撮影範囲を繰り返し撮影することで、3D撮影・4D撮影が可能となります(形態診断→機能診断が可能)
患者さんのメリット
- 広範囲の撮影が可能
1回転の撮影範囲が広いため、広範囲の撮影が可能 - 放射線被ばくの低減
低線量でも高画質な撮影が可能なので、余分な被ばくが避けられる - 撮影時間が短い
- 患者さんの検査中、息止め時間の短縮可能
- 体動がある方や子供の撮影に有用
- 副作用の影響が少ない
- 造影CTで使用される薬の量を少なくできる
- 造影剤による副作用の発生リスクが低減される
- 装置の小型化・開口径の拡大
検査中の患者さんへの圧迫感を軽減(安心感がある)